July, 6, 2021, Cambridge--レーザ光の様々な特性を精密制御できることは、商用VRヘッドセットからバイオメディカル研究用の顕微鏡イメージングまで、われわれが今日使っている多くの技術にとって極めて重要である。今日のレーザシステムの多くは、個別の回転コンポーネントに依存してレーザビームの波長、形状、パワーを制御するので、これらのデバイスはかさばり、保守が難しい。
Harvard John A. Paulson School of Engineering and Applied Sciences(SEAS)の研究チームは、波長を含むレーザ光の様々な特性を、付加的光コンポーネントなしで、効果的に調整できるシングルメタサーフェスを開発した。メタサーフェスは、光をマルチビームに分け、その形状と強度を独立に、正確かつパワー効率よく制御できる。
研究チームは、量子センシングからVR/ARヘッドセットまで幅広いアプリケーション向けの軽量、効率的光システムに扉を開いた。
「われわれのアプローチは、光源の放射を設計し、1個のメタサーフェスで並行して多機能を制御する新方法への道を開く。例えば、合焦、偏光、ビーム成形などである」とSEASのFederico Capassoは話している。
研究成果は、Nature Communicationsに発表された。
チューナブルレーザは、わずか2つのコンポーネント、レーザダイオードと反射メタサーフェスを持つ。以前のメタサーフェス、光制御で個別のピラーのネットワークに依存するものとは違い、このサーフェスは、いわゆるスーパーセル、つまりピラーグループを利用する。これらは、光の様々な面を制御するために協働する。
ダイオードからの光がメタサーフェス上のスーパーセルに当たると、光の一部が後方反射され、ダイオードとメタサーフェスの間にレーザキャビティを作る。光の他の部分は、反射されて最初のものとは独立した第2のビームに入る。
「光がメタサーフェスに当たると、様々な色が様々な方向へ屈折させられる」と論文の筆頭著者、SEAS院生、Christina Spägeleは説明している。「われわれは、この効果を利用し、われわれが選択した波長だけが正しい方向でダイオードに戻るようにそれを設計し、レーザがその特定の波長でのみ動作するようにすることができた」。
波長を変えるには、研究チームは、レーザダイオードに対してメタサーフェスを動かすだけでよい。
「既存の波長チューナブルレーザと比べて設計はコンパクトで簡素。いかなる回転コンポーネントも必要としないからである」と論文の共著者、SEASの前ポスドクフェロー、Michele Tamagnoneは説明している。
研究チームは、レーザビームの形状を完全に制御して、複雑なホログラムを投影できることも示した。この場合は、複雑な、1世紀の歴史をもつHarvadシールド。チームは、入射光をそれぞれが異なる特性を持つ3つの独立したビームに分けられることも示した。従来のビーム、光学渦、ブルズアイのように見え、光ピンセットを含む多くのアプリケーションで使われるベッセルビームとして知られるビームの3つである。
「どんなタイプのレーザでもコントロールできることに加えて、並行して任意の角度の方向にマルチビームを生成できることにより、科学的計測からAR/VR、ホログラフィまで多くのアプリケーションが可能になる」とCapassoはコメントしている。
(詳細は、https://www.seas.harvard.edu)