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シリコンの新しいスピン物性を発見 -半導体スピン素子の小型化に道筋

June, 14, 2021, 京都--京都大学、李垂範 工学研究科特定研究員、白石誠司 同教授らの研究グループはTDK株式会社、大阪大学と共同で、産業のコメとも言えるシリコンにおける、従来の物性理解を超越する新奇なスピン物性の発見に成功した。

 現在のシリコンベースのトランジスタは微細化の限界や膨大な発熱・廃熱による技術的限界に直面しつつあるため、これらの限界を突破するために電子の有するスピン機能を新たな情報担体とした研究が極めて盛んになっている。スピンは磁性の起源であるためにスピン情報担体を操作しスピンを用いた演算を実現するためには一般に外部磁場が必要であるが素子構造が大掛かりになるという問題がある。
 一方近年、スピン軌道相互作用という物質中の相対性理論効果を活用して、人工的に磁場を物質中に創発させることが可能となっており、この効果を用いたコンパクトな情報素子の創出が期待されている。シリコンでもこのような機能が発現できることが待望されてきたが、シリコンは本質的にこのスピン軌道相互作用が小さいためにこの機能発現は不可能だ、というのが従来の理解だった。

 今回、研究グループは巧妙かつ人工的にこのSOIをシリコンに発現させ、外部磁場を全く用いずにシリコン中の流れるスピンを操作することに成功した。この成功により、情報素子の産業応用上最適な材料であるシリコンを用いてスピン演算をよりコンパクトな素子で実現できる道程を開拓することができた。

 研究成果は、2021年6月4日に、国際学術誌「Nature Materials」のオンライン版に掲載された。

(詳細は、https://www.kyoto-u.ac.jp)