June, 1, 2021, 東京--Basler Japanはバーチャルイベント「Basler X-perience」を4/20(火)~22(木)に開催した。今回のバーチャルイベントでは「知る、つながる、体験する」をテーマにBaslerのビジョンソリューションをリアルイベントのような展示会として実施した。
今回の企画には、新型コロナの感染拡大が長期化する中で、Basler Japanでは展示会等においても、顧客との直接のコミュニケーション機会が減少するという状況があり、展示会の枠を越えたイベントをオンラインで開催し、ビジョンのノウハウや業界最新情報を少しでも多くの方へ届けたいという目的が背景にありイベントの開催に至った。
また、昨今同社では、カメラ以外の製品ラインナップ拡充強化をしており、「カメラメーカー」からレンズ、照明、周辺機器、画像処理ボード、ソフトウエアまで「ビジョンコンポーネントのトータルソリューションを提供するプロバイダーへ」と進化を遂げており、顧客にとってはより便利、かつコスト効率良く利用できるブランドとなっている。今回のイベントではカメラ以外の情報も幅広く紹介されていた。
業界最新情報、特別講演など、通常の展示会とは一味違ったコンテンツが用意され「ビジョンアカデミー」と題した学習コーナーでは、ハードウエア、ソフトウエアなど、カテゴリー別にさまざまな技術トピックを見ることができた。
Baslerは、「ファクトリーーオートメーション、医療、交通など幅広い分野で使用されている高品質なカメラとカメラアクセサリーを製造する世界的なリーディングカンパニー」である。ウェビナーの内容は、ビジョン技術が中心であるが、今回は、その中から「ビジョンが変えるロボットの未来」(講師:菅野克俊氏)の内容を簡単に紹介する。
全体は、以下の4セクションから構成されていた。
1.ロボットの種類・特長
2.ビジョン技術とロボット・ビジョン
3.次世代ロボット・ビジョンシステム
4.活用事例
タイトルを忠実に反映するセクションは「次世代ロボット・ビジョンシステム」であるが、この領域の初心者からエキスパートまでをカバーする配慮から、「ロボットの種類・特長」「ビジョン技術とロボット・ビジョン」に時間を割いていた。
1.ロボットの種類・特長
まず、ロボットの種類・特長では、ロボットを産業用ロボットとサービスロボットに分けて紹介された。産業用では、スカラ、多関節ロボット、コボット(協働ロボット)、デルタタイプである。この中で、コボットについては「軽くて低価格、簡単に使える、日本のみならず世界中で広がり始めている」「初期投資が比較的低い」ことから導入が拡大している現状を伝えた。
ウェビナーでは触れていないが、調査会社ABI Researchは、「市場は、2020年に4億7500万ドル、2021年に6億ドル、今後CAGR 32.5%成長で、2030年には80億ドルに達する」と予測している。特にSMEsでは、逐次的にオートメーションを拡大するための入口になっているようである。
サービスロボットは、医療・介護(ヘルスケア)、小売、農業などで利用されるロボットで、自動モバイルロボット(AMR)、Amazonでお馴染みの無人搬送車(AGV)などがある。ビジョンシステムという視点で見ると、調査会社Allied Market Researchは、「ヘルスケアで人工知能ベースの技術やビッグデータの採用増が、ヘルスケアアプリケーションにおけるオートメーション需要の増加、個人化医療の採用増と相まって、ヘルスケア領域でマシンビジョンシステム需要を押し上げている」と市場動向を説明している。
ロボットを取り巻く環境については、上述の調査会社レポートに加えて、ウェビナーの中では、以下の点を紹介している。
2017年~、アジア太平洋諸国がWWロボット市場の50%以上を占める市場成長要因
・生産効率化への政府支援、財政支出、研究開発の主導、税制優遇
・ロボット価格の低下&ビジネスモデルの革新(RaaS: Robot as a Service)
・ロボットの制御ソフトウエアをクラウドから提供により、導入後のアップデートが促進
・新技術の登場で用途拡大&スケーラビリティ向上(コボット、IoT、データ解析、クラウドコンピューティング)
2.ビジョン技術とロボット・ビジョン
ここでは、ビジョン設計の基本について説明している。ビジョンシステムとは、カメラで撮った画像を処理してロボットをガイドするためのシステムである。従って、ロボットの動作、環境を考慮してカメラ、レンズ、インタフェース、PCを選択することになる。撮影では、2D、3Dのどちらが適切かという問題がある。例えば、3D撮影に適した用途としては次の点が挙げられている。
・被写体の大きさ・形状、位置・方向が代わる
・被写体との距離が一定でなく、被写体が動く
・撮影環境が2D撮影に適していない(コントラストが低い、など)
・被写体の寸法・容積を測定したい(立体)
・可動性・対人安全性が求められる場合
ロボットビジョンについては、撮影条件、画像処理と奥行き測定、ロボット動作、必要な被写体情報などの視点から詳細な説明が展開された。また、マシンビジョンハードウエアとしては、エンベデッドシステム、スマートカメラ、ロボット内蔵システムなどがあり、それぞれの特徴について説明された。例えば、スマートカメラについては、「価格は高いが、多様な機能がカメラに実装されているので、直ぐに使える状態となっている。しかし、機能が作り込まれているため、できることが限定されており、限定範囲内でなら使いやすいが柔軟性は低いと言える」。ロボット内蔵カメラについては「ロボットメーカーがオプション提供しているもの。従って直ぐに使える。ただし、スマートカメラにまして、カメラ、レンズの選択肢が狭い」などと説明した。
3.次世代ロボット・ビジョンシステム
このセクションでは、菅野氏は「スマートファクトリー」を念頭において話しているようだった。特に接続性(IIoTコネクティビティ)は重要であり、「スマートファクトリーではすべてのモノがつながる、それが1つのコントロール室から監視、制御できるようになる」、さらに5G接続を念頭において「ワイヤレス機器接続とクラウドサービス、これによりIIoTが拡張される」「ワイヤレス化により、カメラの設置箇所、ロボットコントローラの位置の自由度が高まる」と紹介していた。
特にモバイルロボットの未来については、「高速のワイヤレスが利用できるようになる、クラウドの活用により、システムの構築、導入が簡単になり、アップデートできる。センサの種類も増え、全方位対応が可能になる。AI、DLの活用により、高機能化する」と予測しているようだった。
スマートファクトリーは、調査会社、MarketsandMarketsによると、「市場規模は、2021年の801億ドルから2021~2026年にCAGR 11.0%成長で、2026年に1349億ドルに達する見込みである」。一方、別の調査会社、ABI Researchは、未来の工場について、「フレキシブルな適応型製造ラインを持つと考えられている。これらは高度な自律性を備え、クローズドループ品質制御を組込み、ワーカーは需給変化に効果的な反応工場のために接続されている。ほとんどのメーカーはこれらの機能を持っていないのが現実である。とはいえ、クラウド、シミュレーション、SaaSなどの現在の技術は、テーブルステークスと見なされている」と説明している。
ビジョンベンダーとして、「ロボットとビジョン-ソフトウエアが重要」との視点から、ロボット向けソフトウエアについて、簡潔な紹介があった。
・2D、3Dビジョンが必要
・画像処理で特徴抽出・解析
・AI/DLでビジョン解析、ロボット学習の性能向上
・ソフトの統合とロボット・エフェクタが成功のカギ
・使いやすいツールで開発期間短縮
ウェビナーでは、最後に活用事例が紹介されていたが、コロナ禍に誕生した新たなコンテンツ配信の形として、マーケットでは好評を得ていた。
また、本イベントは「アーカイブ展示」として現在も公開中である。
https://info.baslerweb.com/l/73192/2021-05-04/cs73nx
問い合わせ
Basler Japan
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