Science/Research 詳細

複雑なマイクロオプティクスを3Dプリント

May, 25, 2021, Houston--シュトットガルト大学の研究者は、3Dプリンティングを使って、わすが数µmサイズで高精度、複雑な微小レンズを作製できることを示した。そのマイクロレンズを使ってイメージング中の色歪を補正でき、また様々なアプリケーション向けに設計できる小型、軽量カメラを作ることが可能になる。

「複雑なマイクロオプティクスを3Dプリントできることは、デジタルカメラで使用されるCCD、CMOSチップなどの多くの異なる表面に直接それらが作製できることを意味する。マイクロオプティクスは、光ファイバ先端にプリントして、優れたイメージング品質を持つ非常に小さな医療内視鏡を製造することもできる」とシュトットガルト大学の研究チームメンバー、Michael Schmidは説明している。

Optics Lettersに発表された論文で、Harald Giessenをリーダーとする研究者は、2光子リソグラフィとして知られる一種の3Dプリンティングを利用して、屈折面と回折面を統合するレンズをどのように作製したかを説明している。また、様々な材料を組み合わせてこれらのレンズの光学性能を改善できることも示している。

「マイクロオプティクスの3Dプリンティングは、過去数年で飛躍的に改善され、他の方法では利用できないようなデザイン自由度が可能になっている。複雑なマイクロオプティクスを3Dプリントするわれわれの最適化されたアプローチは、新しい革新的な光学設計の実現に多くの可能性を開くものである。これは多くの研究分野、アプリケーションに有用である」とSchmidは話している。

3Dプリンティングの限界を押し広げる
2光子リソグラフィは、フォトレジストとして知られる液体感光材料を固化、重合化するために集光レーザビームを利用する。2光子吸収としてしらる光学現象により、フォトレジスト立体マイクロメートル体積か重合化される、これによりミクロンスケールで複雑な光学構造を製造できる。

研究チームは、過去10年、2光子リソグラフィで作られたマイクロオプティクスを研究し、最適化してきた。「われわれは、われわれのマイクロオプティクスで作られる画像の一部に存在する色収差として知られる色誤差に気づいていたので、われわれは、こうした誤差を低減するために改善された光学性能の3Dプリントレンズの設計に乗り出した」とSchmidは話している。

色収差が生ずるのは、光がレンズに入るときに屈折する仕方が光の色、つまり波長に依存するからである。補正がないと、赤い光は青い光とは異なる点に集束し、画像にフリンジ、つまり色シームが現れる。

研究チームは、従来色収差補正に用いられていたレンズの微小バージョンを設計した。チームは、色収差補正レンズで始めた。これは、屈折成分と回折成分を統合して、2つの波長が同じ面に集光されることで色収差効果を制限する。研究チームは、商用入手可能なNanoScribe GmbH 製の2光子リソグラフィ装置を使い、プリントされた滑らかな屈折レンズにワンステップで回折面を加えた。

チームは、屈折-回折レンズと異なる光学特性を持つ別のフォトレジストから作製したもう1つのレンズを統合することで色補正レンズを設計し、これを一歩前進させた。2材料レンズに屈折-回折面を上乗せすることで色収差はさらに低減し、これにより画像性能が改善された。設計したのは、シュトットガルトInstitute of Technical OpticsのSimon Thiele。同氏は、最近、PrintOptics社をスピンアウト。同社は、プロトタイピング設計から一連のマイクロ光学系までバリューチェーン全体を顧客に提供する。

マイクロオプティクスのテスト
新しい色収差補正レンズが色収差を低減していることを示すために研究チームは、3波長の焦点位置を計測し、それらを色補正のない単一屈折レンズと比較した。色補正のないレファランスレンズが何ミクロンも離れた焦点となっているのに対して、色収差補正レンズは、1µm以内に整列された焦点を示していた。

研究チームは、そのレンズを使って画像を撮った。単純なレファランスレンズを使って撮った画像は強い色シームを示した。3Dプリントされたアクロマートは、これらを著しく低減したが、アクロマートで撮った画像だけがカラーシームを除去した。

「われわれのテスト結果から分かったことは、3Dプリントマイクロオプティクスの性能は、改善可能であり、2光子リソグラフィを使って、別のフォトレジストとともに屈折面と回折面の統合が可能であることだ」(Schmid)。

研究チームによると製造時間は将来的には高速化される。そうなると、このアプローチは、もっと実用的になる。サイズにもよるが、現在、1つのマイクロ光学素子を作製するのに数時間かかる。その技術は成熟し続けているので、研究者は、様々なアプリケーションに向けて新しいレンズ設計を作ろうと取り組んでいる。