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エネルギー供給制御でレーザをスイッチON/OFF

June, 23, 2014, Vienna--ウィーン工科大学(TU Vienna)の研究チームは、エネルギー供給を増やすとレーザがOFFになり、エネルギーを減らすとレーザがONになる、逆説的な振る舞いを示すレーザ結合システムを作製した。
 このようにして、光を用いて論理回路を作ることができる。
 「通常、レーザに注入されるエネルギー量とレーザから出力されるビームの輝度との間には単純な関係がある。エネルギー供給が少なすぎると、何事も起こらない。ひとたび臨界閾値に達するとレーザの発光が始まり、注入エネルギーが増えれば増えるほどレーザビームの輝度は高くなる」とTU ViennaのStefan Rotter教授は説明する。
 しかし物事は常にそのように単純ではない。2つの小さな円形レーザを結合して共有システムにすると、エネルギー利得と損失の微妙なバランスが不思議な物理効果につながる。個別に発光する2つのレーザが結合していると、相互に作動を止めることができる。エネルギー注入を多くすると光はより強くなるのではなく、完全に暗くなる。逆に、エネルギー供給を減らすと、発光が始まる。
 この現象は2年前に予言されていたが、TU Viennaの物理学、電気工学、数学の各学部と、プリンストンの工学部の共同により実験的に実現できるようになった。実験では、いわゆる量子カスケードレーザを用い、テラヘルツ周波数で発光した。径は1㎜の1/10以下。「このマイクロレーザは今回の実験に完全に適合している。その光特性を精密に制御することができ、波長がかなり大きいからだ」とTU ViennaのMartin Brandstetter氏は説明している。これにより、光の波が一方のレーザから他方へ移行することが容易になる。
 物理学では、波の吸収は通常、望ましくない副作用と見なされている。反射率100%のミラー、入力光を100%伝送する光ファイバ、エネルギーを全く失わない音波は、数学的に表現するのが簡単である。レーザにおける興味深い結合効果が生ずるのは、特殊な吸収層がレーザに作られ、それが光の一部を散逸する時だけだ。
 複雑な数学的な現象が、このレーザの振る舞いに関与している。いわゆる「除外点」、複素空間における特別な交点が現れる。数式がそのような除外点となるときはいつでも、異例の物理現象が起こる。
 そのようなレーザ結合は、新しい電気-光スイッチにつながる。将来、現在の電子素子と同じように、光素子が情報処理に使われるようになる。マイクロレーザ結合は、この目的に最適である。
(詳細は、www.tuwien.ac.at)