April, 2, 2021, CHAMPAIGN--イリノイ大学(University of Illinois Urbana-Champaign)の研究チームは、Photonic Resonator Interferometric Scattering Microscopy(PRISM)をNature Communicationsに発表した。
「われわれは、光と生物学的物質間の相互作用を増幅する新しい顕微鏡形式を開発した。われわれは、非常に迅速かつ高感度診断テスト形式にそれを利用することができる。また、個別アイテムスケールで生物学的プロセスを理解するための強力なツールとしてそれを使える。例えば、個別タンパク質のカウント、個々のタンパク質の相互作用の記録である」と研究リーダー、Brian Cunninghamは説明している。
光学顕微鏡では、光は、スライド上で分子やウイルスと遭遇すると跳ね返り、信号を生成する。正規のグラススライドの代わりに、PRISM技術は、フォトニック結晶を利用する。ナノ構造グラス面は、光の1波長だけを鮮やかに反射する。Cunninghamのグループは赤色を反射するフォトニック結晶を設計、製造した。赤色レーザからの光が増幅されるようにするためである。
「われわれが見ている分子、この研究ではウイルスや小さなタンパク質は、非常に小さい。それらは、従来の光学顕微鏡で検出できるような信号を作れるほどに光を散乱できない。フォトニック結晶を使う利点は、それが光強度を増幅し、その信号の検出を容易にし、われわれがこれらのタンパク質やウイルスを化学的ラベルや染料なしに調べることができる点にある。化学的ラベルや染料は、試料の自然状態を変えたり、その活動を阻害する。われわれは、その分子が存在するかどうかを判断するために判断基準として固有の散乱信号を利用できる」と論文の筆頭著者、Nantao Liは説明している。
研究チームは、COVID-19を起こすウイルスを検出することで、その技術を評価した。PRISMは、コロナウイルスがスライドの表面を移動する時に個々のウイルスを検出した。チームは、PRISMを使って、フェリチンやフィブリノゲンなど、個別タンパク質を検出した。その技術により、研究者は、自然の状態の生物学的標的を研究ができた、例えばタンパク質の相互作用の観察である。またフォトニック結晶スライド表面に抗体を散布する、あるいは標的アイテムを捕らえ、それらをその場所に固定するために他の分子を散布することができた。
「計測に10秒かかる。また、その間にわれわれは、そのセンサに捕らえたウイルスの数をカウントできる。それは室温で動作するシングルステップ検出法である。高速であり、非常に高感度で低コストである。われわれが現在ウイルステストを行っている標準的な方法とは全く異なる。標準法は、ウイルスを壊す必要があり、その遺伝的物質を抽出して、それを化学的増幅プロセスに通す。それを検出できるようにするためである。その方法は、PCRと言われ、正確で感度が良いが、時間がかかり、特殊な装置と訓練した技術者を必要とする」(Cunningham)。
Cunninghamのグループは、PRISM技術をCOVID-19やHIVウイルス負荷モニタリングに、ポータブル、迅速診断デバイスに組み込もうとしている。グループは、血液サンプルのフィルタ、呼気テスト用の凝縮チャンバさえも組みこむプロトタイプデバイスを研究している。
「われわれはこれを生物学やガンの研究ツールとして使うつもりである。それを使って病気のプロセスの一部であるタンパク質の相互作用を理解することができる。ガン細胞が発するこれらの小さな小嚢を検出するために、また診断で、それらがどんな組織から来ているかを見るためにそれを利用することに、われわれは関心を抱いている。さらにそれらがガン細胞からどんな物質を運んでいるかを調べるためにそれを使うことに興味がある」とCunninghamは話している。
(詳細は、https://news.illinois.edu)