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エンタングルフォトンを使った非破壊中赤外イメージング

April, 1, 2021, Washington/Berlin--フンボルト大学ベルリンの研究者は、高散乱材料でOCTの浸透深度を改善するためにエンタングルフォトンが利用できることを示した。その方法は、中赤外OCTの動作法を示しており、セラミックや塗料サンプルなどの材料の非破壊テスト、分析に有用である。

OCTは、下層構造の詳細な3D画像を生成する非破壊イメージング法。OCTは一般に可視光、近赤外光を使用する。これらの波長の光源やディテクタが利用しやすいからである。しかし、これらの波長は、高散乱あるいは多孔性材料の深部には深く浸透しない。

Opticaの論文では、フンボルト大学ベルリンのAron Vanseloのチームは、オーストリアの非破壊テスト研究センタのチームと協力して、超広帯域エンタングルフォトンペアをベースにした中赤外OCTの概念実証実験を発表した。このアプローチが、相対的にコンパクトで簡単な光学セットアップを利用して高散乱サンプルの高品質2Dおよび3D画像を生成できることを示した。

「われわれの方法は、広帯域中赤外光源、ディテクタを不要にする。これらは、この波長で機能する実用的なOCTシステムの開発を困難にしていたものである。それは、エンタングルフォトンが従来技術に対抗する初の実世界アプリケーションの一つを代表する」とVanselowはコメントしている。

同技術は、航空機や自動車で使用される複雑な塗装層の分析、製薬業で使われるコーティングのモニタリングを含む多くのアプリケーションで有用になる。また、芸術保存で役立つ詳細な3D画像も生成できる。

量子力学の活用
フォトンがエンタングルするとき、フォトンは即座に相互に影響するかのように振る舞う。この量子力学的現象は、開発中の多くの量子技術アプリケーション、量子センシング、量子通信、あるいは量子コンピューティングなどにとって重要である。

この技術のために研究者は、極めて多様な波長でブロードバンドフォトンペアを作る非線形結晶を開発し特許化した。そのフォトンの一つは、標準的な装置で簡単に検出できる波長であり、他方のフォトンは中赤外範囲にあって,検出が難しくなっている。その検出が困難なフォトンが、サンプルを照射すると、検出が容易なフォトンだけを使って計測できるように、その信号を変える。

「われわれの技術により、従来は技術的課題のために取扱が難しい波長範囲にあるもので、有用な計測が容易になる。さらに、われわれが利用したレーザとオプティクスは複雑ではなく、現在中赤外OCTシステムで使われているものと比べて、コンパクトでロバスト、コスト効果が優れている」とSven Ramelowは説明している。

より少ない光でイメージング
その技術を証明するために研究チームは、その光学セットアップのパフォーマンスが理論予測に一致することを初めて確認した。チームは、6桁少ない光を使って、最近開発された数少ない従来タイプの中赤外OCTシステムと同等のSNRを達成できることを確認した。

「光そのものに内在する量子雑音を超えた計測に全くノイズがなかったことにわれわれは、当然、驚いた。このことは、微光で優れたSNRを達成できた理由を説明している」とRamelowは話している。

研究チームは、高散乱塗装サンプルを含む、一連の実世界サンプルでそのセットアップをテストした。また、レーザミルマイクロチャネルを含む2つの900 µm厚アルミナセラミックスタックを分析した。その中赤外照射により研究者は、深さ情報を捕らえ、チャネル構造の完全3D再構成を作ることができた。アルミナセラミック内の気孔により、この材料は薬物テストやDNA検出に役立つ。また従来OCTで使用されている波長で高散乱にも有用である。

研究チームは、コンパクトOCTセンサヘッド、パイロット商用アプリケーション開発のために業界や他の研究機関と提携を開始した。