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量子力学的振動を高精度計測に応用

June, 20, 2014, Vienna--ウィーン工科大学(TU Vienna)の研究チームは、量子力学的振動を高精度計測に利用する新しい方法を開発した。よく知られているRamsey干渉計のコンセプトを数100の原子で構成される多粒子系に適用する。
 量子レベルの粒子は波のように振る舞うことがある。この現象は、例えば原子時計などの高精度計測で用いられることがある。通常、単一粒子の波の特性だけが役割を演ずるが、TU Vienna量子科学・技術ウィーンセンタの研究チームは、超低温ボーズ-アインシュタイン凝縮体の数100のルビジウム原子を適切な仕方で振動させることで量子力学的に制御することに成功した。現在、干渉計測に利用できるのは内部の原子状態だけでなく、全ての粒子の集団運動状態も利用できる。
 量子理論によると、ある離散値しか持たない物理量がある。例えば、原子内部の電子のエネルギーを計測すると、常に特別なエネルギー状態になっており、他のエネルギー状態は許されない。小さな空間に閉じ込められると、粒子の運動でも同じことが言える。
 TU Vienna原子・サブアトム物理学研究所のJörg Schmiedmayer教授によると、超低温ボーズ-アインシュタイン凝縮体は巨大な物質波のように動く。「量子物理学の法則は、全ての種類の運動を許すのではなく、ある波動のみが可能になる」。
 ボーズ-アインシュタイン凝縮体は、可能な運動状態の1つを占めるだけでなく、同時に2つを占めるように揺らすことができる。
 そのような重ね合わせの状態は、量子物理学ではごく普通のことである。驚くべきことは、数100の原子と多数の自由度をもつ系をそのような重ね合わせ状態にできることだ。通常、量子の重ね合わせは非常に脆弱である。対象が大きければ大きいほど、許される量子状態の重ね合わせの量子的特性は壊れやすい。いわゆる「デコヒレンス」である。
 「凝縮体をパルスで振動させると、同時に2つの異なる振動運動を示した。しばらく後、もう一度凝縮体を振動させ、2つの重ね合わされた運動を再結合させた」(Sandrine van Frank氏)。2つの可能な種類の運動のどちらが最終的に勝つかは、2つのパルス間の時間遅延、その重ね合わせの量子位相に依存する。そのような一連のパルスは「Ramseyシーケンス」として知られており、多くの分野で高精度計測に利用されている。ここでは、この技術をボーズ-アインシュタイン凝縮体の多粒子状態に移すのに成功した。
 系を制御するために、凝縮体を振動させなければならないので、そのために最適なパルスを見つけることが不可欠だった。これが重ね合わせされる2つの振動状態間の移行を可能にすると考えられているが、それは可能な他の状態を作ることはできないはずだ。全ての他の状態を除外することは、不要なデコヒーレンス効果を抑圧するために重要であることが分かっている。
 「われわれの結果から、数100原子の振動状態は量子実験に使用できることが示された」とSchmiedmayer氏は言う。これらの状態は情報蓄積に利用できる。いずれ、計算にも利用できるだろう。これらの状態の並外れた安定性により、多粒子で構成された大きな系のでコヒーレンス現象を見ることも可能になる。
(詳細は、www.tuwien.ac.at)