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テラヘルツ分光法による酸化ガリウムの超高周波特性の計測

January, 28, 2021, 大阪--大阪大学、東京農工大学の研究グループは、従来の電極生成や接触による材料の汚染が避けられない測定手法に代わる非接触・非破壊の革新的な評価手法であるテラヘルツ時間領域分光法を用いて、次世代のパワーデバイス・超高周波動作デバイス材料として着目されている半導体酸化ガリウム:β-Ga2O3 のテラヘルツ領域の屈折率やキャリア密度等の電気特性評価に成功した。
β型酸化ガリウム(β-Ga2O3)は、シリコン(Si)をはじめ、炭化シリコン(SiC)や窒化ガリウム(GaN)と言った現在の商業利用されている半導体に比べて、変換効率の優れた材料特性を持ち、パワーエレクトロニクス産業に革命をもたらすことが期待されている。また、これまでワイドギャップ半導体として知られてきた SiC や GaN よりさらに広いバンドギャップを持ち、超ワイドギャップ (ultra-wide bandgap (UWBG))半導体とも言われており、パワーデバイス用途に期待されるだけでなく、高周波デバイス用途でも大きな期待を集めている。次世代の高周波通信周波数帯(Beyond 5G, 6G)として、テラヘルツ領域やミリ波領域で動作する電子デバイスの活用が期待される中、β-Ga2O3 の物性評価が待たれている状態だった。中嶋准教授らは、β-Ga2O3 の評価にテラヘルツ時間領域分光(THz-TDS)と呼ばれる非接触・非破壊の技術を使用し、バルク単結晶試料およびエピタキシャル膜のβ-Ga2O3 のテラヘルツ領域での屈折率や誘電率という基本的な特性の評価を初めて実施することに成功した。同時に、キャリア濃度、散乱時間・移動度、静的誘電率という電子デバイスに重要な特性値を計測することにも成功した。このテラヘルツ時間領域分光法は、非接触・非破壊で屈折率等の情報を得るだけでなく、キャリア密度や散乱時間、移動度という電子デバイス動作のための重要なパラメータの評価が可能であることを実証し、β-Ga2O3 半導体ウェーハの評価やβ-Ga2O3 ベースのデバイス評価に非常に有効で実用的であることを示した。
研究成果は、Applied Physics Letters 誌のオンライン版で公開された。

研究グループ
大阪大学レーザ科学研究所の中嶋誠准教授、工学研究科大学院生の Agulto, Verdad C.(博士後期課程)、大阪大学レーザ科学研究所の Mag-usara, Valynn K. )特任研究員、日邦プレシジョン株式会社の岩本敏志博士、東京農工大学大学院工学研究院の熊谷義直教授、村上尚准教授、後藤健助教

(詳細は、https://www.tuat.ac.jp/)