January, 27, 2021, West Lafayette--パデュー大学のエンジニアの実証実験によると、生きた動物モデルで、人間の髪の毛数本程度の長方形ロボットがバク転しながら大腸を転がって進むことができる。
バク転する理由は、目的がこれらのロボットを使って人体の中で薬剤を輸送するための利用だからである。人の大腸や他の臓器は起伏の多い地形である。横転も可能である。
バク転ロボットが薬剤を輸送する理由。薬剤を直接ターゲットに届けることで、毛の消失や胃の出血など、副作用を除去する。薬剤が途中の他の臓器と相互作用して起こす可能性がある副作用のことである。
Micromachinesに発表された研究は、生きた生体組織を転がる初の実証である。ロボットは、バッテリ搭載には小さすぎるので、外部から磁界でワイヤレス制御される。
「回転する外部磁界をこれらのロボットに適用すると、ロボットは自動車のタイヤが荒れ地を転がるように回転する。磁界は、様々な媒体に安全に浸透するので、体内でこうしたロボットを利用するには重要である」とパデュー大学機械工学准教授、David Cappelleriは説明している。
研究チームは、生体内実験に大腸を選んだ。エントリーポイントが容易で、非常に乱雑だからである。
「大腸の周りにロボットを動かすことは、空港でターミナルへ急ぐ歩行者を使うようなものである。フロアが動いているだけでなく、周りの人々も動いている」(Luis Solorio准教授)。
「大腸では、全ての液体や物質が道に沿って動くが、ロボットは逆方向へ動いている。それは、容易な旅ではない」。
しかし、この磁気マイクロロボットは、こうした悪条件にもかかわらず、大腸を首尾良く転がり進むことを研究者の実験は示していた。
チームは、麻酔した、生きたマウスの大腸で生体内実験を行った。直腸からマイクロロボットを食塩水に挿入。チームは、超音波装置を使って,マイクロロボットがいかによく動き回るかを観察した。
研究者の観察によると、マイクロロボットは、人の内臓と似た、豚から切り出した大腸の中も転がることができた。
「大きな動物、人間の体内を動き登ってくるには、数十のロボットが必要になるが、それは多数の薬剤ペイロードで多数のサイトをターゲットにできることを意味する」と生体医用工学准教授、Craig Goergenは説明している。同氏のグループは、様々な種類の組織を通るマイクロロボットのイメージングに取り組んでいる。
Solorioの研究室は、食塩水の小瓶で薬剤ペイロードを運び、放出するマイクロロボットの能力をテストした。研究チームは、マイクロロボットを蛍光模擬薬剤でコーティングし、ロボットは転がりながらその溶液を運び、一時間後にペイロードをゆっくりと拡散させた。
「われわれは,薬剤ペイロードの素晴らしく、制御された放出を行うことができた。われわれは、マイクロロボットを操作して体内のある位置に送り、そこでペイロードを放出し、次に薬剤をゆっくりと拡散させることができる。マイクロロボットはポリマ被覆されており、薬剤は、ターゲットに届く前に落ちることはない」(Solorio)。
磁気ロボットは、ポリマと金属で安価に製造でき,非毒性、生体適合的である。
普通に使われているロールツーロール製造装置が、これらのマイクロロボットを一度に数100個作ることができる。
研究者によると,マイクロロボットは、薬剤デリバリの他に診断ツールとしても利用可能である。
「診断の視点からは、これらのマイクロロボットは,組織の収集に役立てることで、侵襲性の少ない大腸内視鏡の必要性を抑えるかも知れない。従来の大腸内視鏡で必要とされていた準備作業をする必要なく、マイクロロボットは、ペイロードをデリバーできる」とGoerenは話している。
(詳細は、https://www.purdue.edu)