December, 2, 2020, 札幌--北海道大学大学院地球環境科学研究院の先崎理之助教とカリフォルニアポリテクニック州立大学のClinton Francis准教授らの国際研究グループは,アメリカ全土における142種の鳥類の繁殖活動に人為騒音と人工光が大きく影響していることを明らかにした。
近年,多くの研究が鳥類を含む動物の行動への騒音と人工光の影響を明らかにしてきた。しかし,騒音と人工光が動物の繁殖活動にまで影響するのか,もし影響するならその影響は広域的なのか,他の環境要因と比較してどの程度の影響なのか,どんな特徴を持つ動物が影響を受けやすいのかといったことはわかっていなかった。
2000-2014年にアメリカ全土で市民科学者によって収集された142種・58506件の鳥類の繁殖活動データと高解像度の人工光・騒音の空間分布図を用いて,騒音と人工光が鳥類の繁殖活動に与える影響を定量化した。その結果,静かな環境と比較して大きな騒音に晒された環境では,森林性鳥類の一腹卵数(巣内に産み落とされた卵の数)と繁殖成功率(雛が巣立つ確率)がそれぞれ約12%及び約19%低下しており,抱卵放棄率も約15%増加していた。さらに,暗い環境と比べて強い人工光に晒された環境では,開放地性鳥類及び森林性鳥類の双方が3~4週間早く卵を産んでおり,森林性鳥類では一腹卵数が約16%増加していた。これらの結果から,生物群集の繁殖活動への騒音と人工光の広域的な影響が初めて明らかになった。この研究は,生物多様性に対する騒音と人工光の影響緩和策の必要性を示す重要な成果である。
研究成果は, Nature誌にオンライン掲載された。
(詳細は、https://www.hokudai.ac.jp/)