November, 27, 2020, Cambridge--MITとマサチューセッツローウェル大学(University of Massachusetts at Lowell)の研究チームは、完全フラットな広角レンズを開発した。これは、鮮明な、180°パノラマ画像を生成する初のフラット魚眼レンズである。設計は、一種の「メタレンズ」。これは、顕微的特徴でパタン化された薄型の材料であり、一体となって特殊な方法で光を操作する。
この場合は、新しい魚眼レンズは、片側を微小な構造で覆われた単一のフラットなミリメートル厚のガラスである。微小構造は、入射光を正確に散乱させてパノラマ画像を生成する、ちょうど従来の湾曲マルチ素子魚眼レンズアセンブリと同じにように機能する。レンズは、スペクトルの赤外部分で機能するが、研究者によると、改良することで可視光を利用する画像も捉えられるようになる。
その新設計は、薄い超広角レンズにより、幅広いアプリケーションに適用される可能性がある。大きな拡張機能として物理的に取り付けるのではなく、直接スマートフォンやラップトップに組み込める。その薄型レンズは、内視鏡などの医療イメージング機器にも組み込める。また、VRグラス、ウエアラブルエレクトロニクス、他のコンピュータビジョン機器にも組み込み可能である。
裏面のデザイン
メタレンズは、まだ概ね実験段階だが、光学分野を大幅に再形成する可能性がある。以前、研究者は、高解像度で最大60°の比較的広角画像を生成するメタレンズを設計した。視野をさらに広げることは、従来なら、収差を補正する追加の光学コンポーネントを必要とする。
研究チームは、追加のコンポーネントを必要とせず、最小素子数を維持する簡素な設計を思いついた。その新しいメタレンズは、片側にテルル化鉛を堆積した薄膜を持つフッ化カルシウムでできた単一の透明ピースである。チームは、リソグラフィ技術を使って、その膜に光学的構造パタンを彫り込んだ。
個々の構造、つまり「メタアトム」が、複数のナノスケール形状の一つに形成されている。長方形あるいは骨の形の構成で、特殊な方法で光を屈折させる。例えば、散乱に長い時間がかかる。つまり、位相遅延として知られる現象だ。
従来の魚眼レンズでは、ガラスの湾曲が自然に位相遅延分布を作り、それが最終的にパノラマ画像を生成する。研究チームは、対応するメタアトムパタンを見つけ出し、このパタンをフラットガラスの裏面に彫り込んだ。
MIT材料科学・工学部准教授、Juejun Huは、「われわれは、各部分が完璧な焦点となるように裏面構造を設計した」とコメントしている。
前面には、光が入る開口部、光学アパチャを設置した。
「光がこのアパチャから入ると、ガラスの最初の面で屈折し、次に角度分散する。光は裏面の様々な部分に、多様な角度ではあるが連続角度で当たる。裏面を正しく設計している限り、必ず全景で高品質イメージングを達成できる」と論文の著者の一人、Mikhail Shalaginovは説明している。
別の研究では、チームはメタアトムにアモルファスシリコンナノポストを使い近赤外波長でメタレンズが機能する設計とした。
研究チームによると、新しいレンズは、他の光波長にも適用可能である。例えば、可視光で同様のフラットな魚眼レンズを作るには、その特別な波長範囲の屈折を改善するために、現状よりも光学的特徴は小さくしなければならない。レンズ材料も変えなければならない。しかし、チームが設計した一般的アーキテクチャは同じままである。
研究チームは、その新しいレンズのアプリケーションを調べている。コンパクトな魚眼カメラとしてだけでなく、パノラマプロジェクタ、スマートフォン、ラップトップ、ウエアラブル機器に直接組み込んだ奥行きセンサなどである。
(詳細は、https://news.mit.edu)