November, 25, 2020, Warsaw--ワルシャワ大学の研究者は、呼気にホルムアルデヒドを検出する非常に高感度であるがシンプルな光学的方法を開発した。ホルムアルデヒドは、肺ガンや乳ガンの潜在的なバイオマーカーとして研究されているので,新方法はいずれ、ガンを選別する安価で迅速な方法になる。
「呼気でバイオマーカーを計測することは非侵襲的、無痛、高速であり、非常に初期の病期でさえガンを選別するために利用できる。処置の成功のために、これは非常に重要である。われわれが開発した光学的方法は、この種の計測をより実用的で安価にする」とワルシャワ大学、研究チームリーダー、Mateusz Winkowskiは説明している。
Biomedical Optics Express誌でWinkowskiとTadeusz Stacewiczは、マルチパス分光法に基づいたその新しい光センシング法は、100万空気粒子中に1分子(1ppm)のフォルムアルデヒドの存在を検出できることを示している。これは、光学計測を妨げる気体の中でもできる。
「われわれは、いずれ安価で、どんな医療コンサルティング室でもガンのスクリーニングに使えるテーブルトップ機器を構築する。基本的な医療試験中に患者はデバイスに息を吹き込み、一分以内に医者は、その患者が追加の従来的検査か必要かどうかを知る」とWinkowskiはコメントしている。
感度向上
分光法は、サンプルが吸収する、あるいは放出される光の色を計測することで物質の化学成分を特定するために使用できる。マルチパスとして知られる分光アプローチは、低濃度ガスの検出に役立つ。光がサンプルと相互作用する範囲を広げるからである。このセットアップは、両端にミラーを持つ実験セルを使用する。一方のミラーの小さな穴から導入されるレーザがセルの中で前後に跳ね回り、セル長の数10あるいは数100倍相互作用する。
極めて低濃度の検出を行うとき、マルチパス分光法ではノイズが問題になる。これは、マルチレーザビームが、フリンジ干渉という一種の光干渉を作り出すからである。これにより感度が低下し、バイオマーカー濃度を正確に判定できなくなる。この光学干渉を抑制するために研究チームは、光フリンジ抑制という方法を開発した。
その光フリンジ抑制技術では、チームは広い波長範囲でレーザ放出をわずかに変える、つまり変調し、これら波長でサンプルからの放出光を平均化する。これが光干渉の除去に役立ち、ホルムアルデヒドの検出ができるようになる。研究チームは、呼気サンプルに見られる他の成分からの干渉低減に役立つスペクトル範囲とサンプル圧力も選択した。
ホルムアルデヒドの光学センシング
研究チームは、空気中のホルムアルデヒドの校正済み人工混合を利用してその新アプローチをテストした。結果によると、そのアプローチは、病気の存在を示唆するレベルであり、呼気のホルムアルデヒド検出には十分すぎるほどだった。
「われわれの光フリンジ抑制技術を使って、マルチセルを利用する光学系を改善することができる。家庭用品や産業源から放出されるホルムアルデヒドガスの計測にも役立ち、人の健康への影響をさらによく理解できるようになる」とWinkowskiはコメントしている。
次に研究チームは、その分析アプローチの能力を呼気のエタンガス計測のためにテストする計画である。研究成果の示唆するところでは、エタンもガンや他の病気のバイオマーカーとして利用できる。