November, 19, 2020, Melbourne--RMIT大学の研究チームは、昆虫の翅からヒントを得たナノマテリアルが、接触するバクテリア(細菌)をどのように破壊できるかを明らかにした。
セミやトンボの翅は、自然のバクテリアキラーである。薬剤に耐性があるスーパーバグと闘う方法を探求する研究者を刺激した現象である。
新しい抗菌面が開発されつつある。特徴は、昆虫の翅の死に至らしめるアクションを再現する様々なナノパターンであるが、研究者はそれらがどのように機能するかの秘密を解明し始めたばかりである。
Nature Reviews Microbiologyに発表された論文で研究者は、こうしたパターンがどのようにバクテリアを破壊するか、バクテリアを引き伸ばし、スライスし、あるいはバラバラにするかを詳細かつ正確に説明している。
論文の筆頭著者、RMIT大学のElena Ivanovaによると、バクテリアを殺す非化学的な方法を見つけ出すことは重要である。薬剤に耐性のある細菌に感染して毎年70万人以上の人々が命を落としている。
「抗生物質に対するバクテリア耐性は、世界の健康にとって最大脅威の1つであり、感染の通常治療がますます難しくなってきている」(Ivanova)。
「アイデアを求めて自然に注目すると、昆虫が非常に効果的な抗菌システムを進化させていることがかわる。
昆虫が示唆するナノパターンがどのようにバクテリアを殺すかを正確に理解することができれば、その抗菌効果を改善するためにその形状をもっと正確に設計することができる。
われわれの究極の目的は、インプラントや病院で利用するために、低コスト、スケーラブルな抗菌表面を作ることである。これは致死性のスーパーバグと闘う強力な武器になる」。
抗菌表面
セミやトンボの翅は、微小なナノピラーで覆われている。ナノピラーは、バクテリアを殺す効果を再現することを狙って研究者が最初に開発したものである。
それ以来、研究者はシーツやワイヤなど他のナノ形状を精密設計した。これらはすべて、バクテリアの細胞に物理的に損傷を与えるように設計されている。
これらのナノ構造に留まるバクテリアは、引き込まれ、引き伸ばされ、分割され、バクテリアの細胞膜が破壊され、最終的にバクテリアを死に至らしめる。
新しい報告は、これらのナノパターンが細胞膜を破裂させるために必要な力学的な力を発揮させる様々な方法を初めて分類している。
「われわれの合成生体模倣ナノ構造は、その抗菌性能がかなり違っており、その理由が常に明らかになっているわけではない。
われわれは、その致死性の力を最大化するために特別なナノパターンの最適形状と寸法も解明しようとしてきた。
われわれが開発してきた合成面は、自然、例えばトンボを次のレベルに引き上げるが、われわれの見方では、様々な種が、ある特定のバクテリアを殺すのにより適した翅を持っている。
われわれは、ナノスケールでその翅を調べ、翅の表面を覆うナノピラーの密度、高さ、直径に違いがあると認識している。したがって、適切なナノ構造とすることがカギになると理解している」。
Ivanovaによると、大規模、コスト効果良くナノ構造面を製造し、医療や産業アプリケーションで利用するには、課題が残っていた。
しかし、ナノファブリケーション技術の最近の進歩は、生体医用抗菌ナノテクノロジーの新たな時代を開く見通しを示している、とIvanovaは語っている。
(詳細は、https://www.rmit.edu.au)