November, 19, 2020, 東京--東京理科大学基礎工学部電子応用工学科の谷口淳教授、オーテックス株式会社日和佐伸氏らの研究グループは、レプリカモールド表面の水のぬれ性を示す接触角を測定することで、離型剤や離型性を有するレプリカモールドの転写寿命を短時間で評価可能な方法を開発した。これは、ナノインプリントにおける離型剤やレプリカモールドなどの材料開発に非常に有効な手法となる。
紫外線硬化樹脂を用いたナノインプリント転写である光ナノインプリントリソグラフィ技術(UV-NIL)は、少ないステップ数でナノスケールの構造を作成できる技術で、低コストでナノ材料を大量生産できる技術としてよく用いられる。しかし、ナノインプリントの繰り返し転写回数が多くなると、離型性が悪くなり、鋳型となるマスターモールドが劣化するという問題がある。したがって、マスターモールドのレプリカであるレプリカモールドを作成し、これを鋳型として使用することでマスターモールドの劣化を防ぐ方法が一般的である。しかし、レプリカモールドの寿命を定量的に評価する方法はこれまでなかった。
研究グループは、東京理科大学とオーテックス社が共同で開発した紫外線硬化樹脂を用いてレプリカモールドを作成し、それを鋳型として繰り返しUV-NIL転写を行うことで、レプリカモールドの耐久性を調べた。その結果、並行な線を転写したパターンでは、線の溝が毛細管現象で広がりが早くなるため、転写を繰り返すと線に平行方向の接触角はすぐに接触角が低くなるのに対し、線に対して垂直方向の接触角は緩やかに低下することを利用し、この2方向の接触角を解析することで、レプリカモールドの寿命予測ができることを突き止めた。
ナノインプリントは幅広い分野で活用が期待される技術だが、モールドの寿命を定量的に評価する方法はなかった。今回研究グループが考案した技術が確立すれば、転写寿命などを予測できるため、研究、開発、量産に役立つと期待される。
(詳細は、https://www.tus.ac.jp)