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MPQとLMU、周波数コム、高分解能スペクトル

November, 11, 2020, Zurich--人の眼は3つのスペクトル色帯域(赤、緑、青)だけを感知する。また、非常に暗くなると、もはや色の区別ができないことをわれわれはみな知っている。分光学者は、光波長の周波数でもっと多くの色を判定できる。したがって、そのスペクトルフィンガープリントで原子と分子を区別できる。概念実証実験で、マックスプランク量子オプティクス研究所(MPQ)とルートヴィッヒマクシミリアン大学(LMU)のNathalie Picqué と Theodor Hänschは、ほぼ完全な暗闇の中で、10万近い色の広いスペクトルを記録した。実験は、二つのモードロックフェムト秒レーザとシングルフォトンカウンティングディテクタを使用。結果は、Proceedings of the National Academy of Sciencesに発表された。

モードロックフェムト秒レーザは、正確な等間隔周波数の数十万の鮮明なスペクトル線を発する。そのようなレーザ周波数コムは今では、レーザ波の振動カウントに広く利用されており、光原子時計で正確な時計としての役割を果たしている。周波数コム技術は、2005年ノーベル物理学賞で注目された。

過去15年に、MPQ のNathalie Picquéは、広帯域光分光学への新しいアプローチに周波数コムを利用した。「デュアルコム分光学」技術では、1つのレーザの全てのコムラインが、広いスペクトル範囲で同時にサンプルを調べ、わずかに間隔が違う第2レーザのコムラインが、読取りのために高速フォトディテクタに干渉する。コムラインのペア、各レーザからのものがディテクタ信号でRFビートノートを生成する。このRF信号はデジタル化され、コンピュータで処理可能である。サンプルのどんな光スペクトル構造も、RF信号のコム対応パタンとして再現する。光信号は,何倍も効果的にスローダウンされる。これは繰り返し周波数の差によって分割されたレーザ繰り返し周波数に等しい。この強力な分光学的ツール固有の利点に含まれるのは、実質的に制約のないスペクトル分解能、原子時計で可能になる校正、複雑なスペクトルの一貫性の高い取得。ここではスキャニング、機械的な可動部分は不要である。

Picqué と Hänschは、デュアルコム分光学が、フォトンカウンティング領域で極微光に拡張可能であることを実証した。干渉信号は、たとえパワーが非常に低くても、フォトンカウンティングディテクタの統計で観測可能である。平均2000レーザパルスで一度だけのクリックが記録される。そのような状況下では、各レーザから1個、2つのフォトンが検出経路に同時に存在することは、全くあり得ない。検出前にフォトンが存在すると仮定しても、実験は直観的には説明できない。

通常よりも10億倍低い光強度で機能できることで、デュアルコム分光学には素晴らしい新展望を開ける。Nathalie Picquéは、「その方法は、極紫外、軟X線領域など、非常に微弱な周波数コム光源を利用する特殊な領域に拡張可能である。分光信号は、高減衰材料、あるいは長い距離での後方散乱で取得可能である。また、ナノスコープサンプルから単一原子あるいは分子、つまり非常に微弱な蛍光信号を発するところからデュアルコムスペクトルを抽出することができる」と説明している。

(詳細は、https://www.mpq.mpg.de)