November, 6, 2020, 東京--東京大学 生産技術研究所の田中嘉人助教、志村努教授らの研究グループは、金属ナノ粒子中の電子のさざ波(局在プラズモン共鳴)により光の持つ運動量を制御し、その反作用としてナノ粒子に働く光の力(光圧)を利用して微小マシンを動かすことに成功した。
これまで、光圧を利用した光ピンセットは、微小マシンを駆動する方法として応用範囲を拡げてきた。しかし、光ピンセットは、照射するレーザ光を集光・走査することによって光圧の方向を制御するため、光の回折による限界から波長スケールより微細な操作が実現できず、光駆動マシンの集積化や実装を阻んでいた。
研究グループは、ナノ空間で光散乱を増強・制御することができる金属ナノ粒子の局在プラズモン共鳴に着目した。光散乱を通じて光の運動量変化を制御することで、ナノ粒子の向きで光圧の方向を制御できることを発見した。このナノ粒子を微細加工技術によって微小マシン上に適切に配置することで、光の波長スケールより小さいナノ空間に働く光圧の位置と向きを精密にデザインすることが可能になり、光の照射によって動力を生み出すナノスケールのリニアモーターや回転モーターを実現した。
このアプローチは、レーザ光の集光・走査が不要なため光の回折による限界がない。光により物体を操作する技術にパラダイムシフトを起こし、光駆動マシンの集積化・階層化が進み、光駆動ナノロボットやナノ工場の実現が期待される。
研究成果は「Science Advances」オンライン速報版で公開された。
(詳細は、https://www.iis.u-tokyo.ac.jp)