October, 28, 2020, つくば--産業技術総合研究所(産総研)ゼロエミッション国際共同研究センター多接合太陽電池研究チーム 松井卓矢上級主任研究員、齋均主任研究員は、ドイツ フラウンホーファー研究機構 太陽エネルギーシステム研究所(Fraunhofer ISE)との共同研究により、原子層堆積法で製膜した酸化チタン薄膜(厚さ:約5 nm)がテクスチャー構造をもつ結晶シリコンの表面欠陥を不活性化する機能と、結晶シリコンから正孔を選択的に取り出す機能をもつことを発見した。
この酸化チタン薄膜を正極側に配置した結晶シリコン太陽電池を試作し、実用化につながる20%を超える変換効率を実証した。今回開発した技術により、従来の正孔取り出し材料を用いた結晶シリコン太陽電池に勝る性能を低コストの材料・プロセスで得られる可能性があり、高効率で低コストの太陽電池の実現が期待される。
今回開発した酸化チタンを用いた太陽電池は、従来のアモルファスシリコンを用いたヘテロ接合型結晶シリコン太陽電池に比べて、波長400-600 nmで高い外部量子効率を示し、短絡電流密度にして約2.0 mA/cm2の増加を得た。これは、アモルファスシリコンのバンドギャップ1.7 eVに比べて酸化チタンのバンドギャップが3.4 eVと大きいことと、酸化チタンの優れた透明性により正極の光吸収による損失を低減できたことに起因する。この太陽電池の性能にはまだ改善の余地が残っているものの、短絡電流密度の効果的な改善によりこれまでに21.1%(第三者測定)の変換効率を得た。この値は従来のヘテロ接合型結晶シリコン太陽電池の性能(研究室では22.3%)に匹敵する水準である。
技術の詳細は、ACS Applied Materials & Interfacesでオンライン公開された。
(詳細は、https://www.aist.go.jp)