October, 27, 2020, Zurich--集中的な超音波は、ETH研究者が脳にピンポイント精度で薬剤を送達する際に役立つ。言い換えると、効果を望むとことろにのみ送達する。この方法により、将来的には、精神疾患、神経疾患、腫瘍の処置をほとんど副作用なしで実行できるようになる。
ETH-Zurichの研究チームは、極めて正確に、脳に薬剤を集中して放出する方法を開発した。これは将来、精神疾患薬剤やガン薬剤および他の薬剤を、医学的に望ましい脳のその領域だけに送達することを可能にする。
今日、これは実行不可能である。血流を通って送達される薬剤は、脳や身体全体に到達する。これは、場合によっては副作用の原因となる。新しい方法は、非侵襲的であり、超音波を使って頭の外側から制御して脳に薬剤を正確に送達する。研究成果は、Nature Communicationsに発表された。
薬剤が脳や身体全体に作用しないように、新しい方法は、特殊な薬剤キャリアを利用する。これは、ガス含有超音波感度マイクロバブルに付随する球形脂質小胞に薬剤を包むものである。これらを血流に注入し、血流がそれらを脳に輸送する。次に、研究者は、2段階の集束超音波を利用する。集束超音波は、すでに腫瘍学で使われており、体内の正確に定義された点でガン組織を破壊する。しかし、新しい発明では、研究チームは、遥かに低いエネルギーレベルで働きかける。つまり、組織を損傷しない。
薬剤を音波でトラップ
第一段階では、研究チームは、低エネルギー超音波を利用して、脳内の所望の場所で薬剤キャリアを結合させる。「われわれがしていることは、基本的に、超音波パルスを使い、所望の場所周囲に音波から仮想的ケージを作ることである。血液の循環に伴い、血液が脳全体に薬剤キャリを流す。しかし、ケージに入っているものは、逆流できない」とMehmet Fatih Yanikニューロテクノロジー教授は説明している。
第二段階で、研究チームは超音波のエネルギーの高いレベルを使って、この箇所で薬剤キャリアを振動させる。剪断力が薬剤の周りの脂質膜を破壊し、薬剤を放出すると、その場所の神経組織によって吸収される。
研究チームは、ラットの実験でその新しい方法の効果を実証した。まず、神経抑制薬を薬剤キャリアにエンカプセルした。次に、新技術を使い、脳の2領域を接続する特殊神経回路網のブロックに成功した。研究チームは、神経回路網のこの特定箇所をブロックするだけで、薬剤は脳全体で作用しないことを実験的に示すことができた。
より効率的な薬剤送達
「われわれの方法は、効果が望ましい脳のサイトに薬剤を集中するので、それほど高い用量は必要ない」とYanikは言う。例えば、ラットの実験では、用いた薬剤量は、一般的に必要とされる用量よりも1300倍小さかった。
他の研究グループはすでに、集束超音波を使って、脳の特定領域に薬剤送達を高めようとしていた。しかし、これらのアプローチは、局所的に薬剤をトラップして集めることができず、それどころか、血管から神経組織への薬剤送達を強めるために血管細胞に局部損傷を起こすことになった。これは潜在的に長期の有害な結果をともなう。「われわれのアプローチでは、血流と神経組織の間の生理学的障壁は、無傷のままである」とYanikは話している。
研究チームは現在、精神疾患の動物モデルで、例えば不安を軽減するために、その方法の効果をテストしている、また、外科的手術が利用できない致死性の脳腫瘍をターゲットにして、その方法の効果をテストしてる。その効果と利点が動物で確認されると、研究チームは、人間の苦しみを緩和するためにその方法のアプリケーションを前進させることができる。
(詳細は、https://ethz.ch)