October, 1, 2020, 金沢--金沢大学 理工研究域 機械工学系の砂田哲 准教授、埼玉大学 大学院理工学研究科 数理電子情報部門の内田淳史 教授および菅野円隆助教の共同研究グループは、脳のような高度かつ柔軟な情報処理を光の物理現象に担わせることで、ニューラルネットワークのような機械学習が可能となることを実証した。
近年のビッグデータ処理やAI(人工知能)技術の進展に伴い、革新的コンピューティング技術の開発が進んでいるが、電子型デバイスとしてのニューラルネットワーク構築は処理速度やエネルギー効率の観点で限界が指摘されている。他方、高速性とエネルギー効率の高さを持つ光回路によるニューラルネットワークの構築がこれまでに提案されてきたが、1次元的な光導波構造を利用してきたため大規模な実装が困難だった。
研究では、スペックル現象と呼ばれる光学現象に着目し、光の干渉現象によって生み出される多様な波動現象を利用した新しい計算原理に基づく機械学習により、複数の時系列信号の高速予測処理が可能であることを見いだした。この光波動の計算システムは、従来の電子型コンピューターよりも飛躍的に高効率な情報処理を実現する可能性を秘めているだけでなく、1つの光デバイスで独立した複数のタスクを並列的に実行できる特徴を有している。
今後、この計算原理をさらに高度化することにより、高速性と並列性を兼ね備えた新しいAIチップへの発展が期待される。さらに、光通信分野での情報処理効率を飛躍的に高めるデバイスとしての応用も期待できる。
研究成果は、Optics Expressに掲載された。
(詳細は、http://www.saitama-u.ac.jp)