September, 18, 2020, Lausanne--UCSB、Caltech、EPFLの国際研究チームは、フォトニックシステムを変革する可能性がある集積技術を開発した。
情報通信技術は急速な進歩を続けている。しかし、増え続けるデータセンタ需要は、電気的インプット-アウトプットシステムをその物理的限界に押しやっており、これがボトルネックになっている。この成長を維持するには、コンピュータの構築方法に変化が必要である。将来は、光になる。
過去10年、フォトニクス分野は、サーバ間のリンク距離を増やすことでチップとチップの帯域問題にソリューションを提供してきた。電気のインタコネクトと比較して高帯域、低エネルギー、低遅延である。
この変革の一つの要素、シリコンフォトニクス(SiPh)は、UC Santa Barbaraとインテルがシリコンレーザ技術を実証した15年前から進歩した。これは、それ以来、この分野爆発のトリガーとなった、インテルは現在、世界中のデータセンタに数100万のシリコンフォトニックトランシーバを供給している。
今回、UCSB、Caltech、EPFLの提携により、その分野で新たな革命的発見が実現した。研究グループは、複雑な光システムを単一のシリコンフォトニックチップに簡素化、圧縮することができた。Natureに発表された成果によると、製造コストを大幅に下げ、従来のシリコンチップ製造で集積が容易にできる。
インターネットバックボーンのフォトニクスの大きな成功にもかかわらず、今なお課題がある。データトラフィックの爆発は、Siフォトニクスチップが対処できるデータレートに対する要求を強めている。これまで、この要求に対処する最も効率的な方法は、マルチカラーレーザ光を使って情報を送ることだった。レーザ波長が増えれば増えるほど、ますます多くの情報を送ることができる。
しかしこれは、集積されたレーザの問題を提起する。つまり、それは一度にレーザ光の1波長しか生成できない。「その目的では、そのチップに文字通り50以上のレーザが必要になる」とBowers。また、50個のレーザを使用することは高価になり、パワーに関して非効率である。さらに、ノイズと熱が、個々のレーザが生み出す光の周波数揺らぎの原因となる。最後に、多数のレーザでは、周波数は、相互にドリフトする、初期のラジオ局のようなものである。
ソリューションは、「光周波数コム」の技術に見出せる。それは、レーザ光の等間隔周波数の集合である。その周波数をプロットすると、スパイクとディップが現れる、それが櫛(コム)に似ているので、その名前になった。
コムの生成は、大きくて高価な装置を必要としていたが、今では、最近登場してきたマイクロ共振器ベースのソリトン周波数コムを使うことでコムの生成が可能になっている。CMOSフォトニックチップ上に構築された微小周波数コム光源である。この「集積フォトニクス」アプローチを使うことで、共同研究チームは世界最小のコム生成器を開発した。これは根本的に、これらの問題の全てを解決する。
そのシステムは、むしろ簡素であり、商用入手可能なフィードバックレーザとSiNフォトニックチップで構成されている。「われわれが手にしているものは、一つのレーザと一つのチップから、これら全ての色を生成する光源である。これの意義深い点はそこである」とBowersは言う。
簡素な構造の意味は、小さなスケール、少ないパワー、低コストである。セットアップ全体は、現在、マッチ箱よりも小さなボックスのパッケージに収まる。全体の価格と消費電力は、以前のシステムよりも小さい。
新技術は、操作が著しく簡便である。以前、安定したコムの生成は、やりにくい作業だった。研究者は、周波数とパワーを適切に調整してコヒレントソリトンコムを生成しなければならなかった。その時でさえ、そのプロセスは、毎回コムを生成することが保証されなかった。「新しいアプローチは、部屋の明かりをつけるように、プロセスを簡単にする」とCaltech物理学、情報科学技術教授、Kerry Vahalaは話している。
「結果について素晴らしいことは、周波数コムがオンデマンドで生成できる、完全フォトニック集積と再現性である」とEPFL物理学教授、Tobias J. Kippenbergはコメントしている。
EPFLチームは、超低損失SiNフォトニックチップを提供した。これはEPFL Center of MicroNanoTechnology (CMi)で製造され、ソリトンコム生成の需要コンポーネントとして役立つ。その低損失SiNフォトニクス技術は、ラボのスタートアップ、LIGENTECを通して販売されている。
全てのこれらの改善の背後にある「マジック」は、興味深い物理現象にある。ポンプレーザと共振器が統合されると、その相互作用が高結合システムを形成する、これは自己注入ロッキングであり、同時に「ソリトン」を生成する、共振器の中を無期限に周回し、光周波数コムを生み出すパルスである。
その新技術は、フォトニクスに幅広い影響を及ぼすと見られている。通信関連製品でマルチカラー光源需要に対処するだけでなく、多くのアプリケーションでたくさんの機会を開く。一例では、光時計。これは世界で最も精確な時間基準を提供し、ナビゲーションから物理的定数計測まで、多くのアプリケーションで使われる。
「光時計は大きく、重く、高価だった」とBowers。「世界にほんの数個しか存在しない。集積フォトニクスにより、われわれは腕時計に収まるようなものを作れ、安価に入手できるようになる」。
「低損失集積光マイクロコムにより、新しい世代の光時計、通信、センサが可能になる。われわれは、このアプローチからよりコンパクトな、一段と高感度なGPSレシーバを目にすることになる」とDARPAのプロジェクトマネージャ、Gordon Keelerはコメントしている。
全て、未来はフォトニクスにとって明るい。「それは、実験室から実世界に周波数コム技術を移行させる重要なステップである。フォトニクスとわれわれの日常生活を変えることになる」とBowersは見ている。
(詳細は、https://news.epfl.ch)