July, 21, 2020, New York--コロンビア大学の研究チームは、近赤外と青色波長の両方で、初のオンチップ光フェーズドアレイ技術を報告した。幅広い研究分野にアプリケーションがある。
ビームステアリングシステムは、イメージング、ディスプレイ、光学トラッピングなどのアプリケーションで長年使われてきたが、同システムは大きな機械式ミラーを必要とし、振動に対して過度に敏感である。コンパクトな光フェーズドアレイ(OPAs)は、ビームの位相プロファイルを変えることで光ビームの角度を変えるものだが、これは多くの新興アプリケーションにとって有望な新技術である。これらに含まれるのは、自動運転車の超小型固体LiDAR、非常に小さくて軽量なAR/VRディスプレイ、イオンqubitを扱う大型トラップイオン量子コンピュータ、脳を研究するために光と遺伝子工学を利用する新しい研究分野、光遺伝学など。
ロングレンジ、ハイパフォーマンスOPAsは、数千の能動位相制御、大電力を食う発光素子を詰め込んだ大ビーム放射エリアを必要とする。今日まで、そのようなLiDAR用大規模位相アレイは実用性がないと考えられていた。現状。利用する技術が支持できない電力レベルでの動作が必要だからである。
コロンビア大学工学教授、Michal Lipsonをリーダーとする研究チームは、ローパワービームステアリングプラットフォームを開発した。これは非機械式でロバスト、スケーラブルなビームステアリングアプローチである。近赤外でローパワー大規模光フォーズドアレイを最初に実証した、自律ナビゲーションとAR、それぞれで青色波長でオンチップ光フェーズドアレイ技術を初めて実証したものの一つ。ワシントン大学セントルイスのAdam Kepecsのグループと協働して研究チームは、精密オプトジェネティック神経刺激向けに青色波長で光スイッチアレイに基づいたインプラント可能なフォトニックチップも開発した。研究成果は、Optica、Nature Biomedical Engineering、and Optics Lettersに発表された。
「この新しい技術によりわれわれのチップベースのデバイスは、ビームを望むところへどこでも向けることができ、幅広い領域の変革に扉を大きく開くことになる。これに含まれるのは、例えば、LiDARデバイス、自動運転車用のクレジットカード、あるいはマイクロスケールのビームを制御して光遺伝学ニューロサイエンス向けにニューロンを刺激する神経プローブ、あるいはまた汎用量子走査や読み出し用システムで個々のイオンへの光デリバリ法」。
Lipson のチームは、スケーラブルな光システムを可能にするために、動作速度とブロードバンド低損失の両方を維持しながら、光位相シフタの消費電力を減らすマルチパスプラットフォームを設計した。同じ位相シフタで光信号を何度もリサイクルさせた。総電力消費が、それがリサイクルする同じ要因で減少するようにするためである。チームは、512の能動制御位相シフタと光アンテナを含むシリコンフォトニックフェーズドアレイを実証した。消費電力は非常に低く、広いFOVにわたり2Dビームステアリングができる。この成果は、数千のアクティブ素子を含むスケーラブルなフェーズドアレイ構築に向けた大きな前進である。
OPAsの現在の可視光アプリケーションは、大きなテーブルトップ機器に制約されている。これらは、大きなピクセル幅のためにFOVが制限されているからである。近赤外波長で行われた、以前のOPA研究は、Lipson Nanophotonics Groupの成果も含め、可視光で同様の成果を達成するには製造と材料で課題に直面していた。
「波長が小さくなると、光は、製造誤差などわずかな変化により敏感になる。散乱が多くなり、製造が完璧でないと、結果的にロスが大きくなる。しかも製造は決して完璧にはできない」(Min Chul Shin、グループのPh.D学生)。
わずか3年前、Lipsonのチームは、SiNで製造レシピを最適化することで低損失材料プラットフォームを示した。このプラットフォームを利用して、可視光波長で新しいビームステアリングシステムを実現した。これは、SiNプラットフォームを使った青色波長で動作する初のチップスケールフェーズドアレイだった。
研究者にとって主要な問題は、可視光の最小波長で、より短く、小さな波で進むために他の波長よりも散乱が大きい青色領域で実行することだった。青色でフェーズドアレイ実証でもう一つの問題は、広角を達成するために研究チームがエミッタを半波長離して、つまり少なくとも波長よりも小さい、40 nmスペーシングで設置するという課題を克服しなければならないことだった。これは達成が非常に難しかった。加えて、光フェーズドアレイを実用的アプリケーションに使えるようにするために、チームは多くのエミッタを必要とした。これを大規模システムに拡張することは、極めて難しい。
「この製造は、実際に難しいだけでなく、近接した導波路に多くの光黒ストークも存在する。われわれには独立した位相制御はありえない。また、すべての光が相互に結合しており、方向性ビームを形成しないようにしたい」(Shin)。
青色のこうした問題を解決することは、研究チームが、波長が長い赤や緑で簡単にこれができるということである。「この波長範囲によりわれわれは、光遺伝学的神経刺激などの新しいアプリケーションに対処できる。われわれは同じチップスケール技術を使って、マイクロスケールビームを制御し、脳内のニューロンを正確にプローブすることができた」とポスドク研究者、論文の共同主筆、Aseema Mohantyはコメントしている。
チームは現在、応用物理学教授、Nanfang Yuのグループと協働して、電力消費の最適化に取り組んでいる。ローパワー動作は、軽量ヘッドマウントARディスプレイや光遺伝学にとって極めて重要だからである。
(詳細は、https://engineering.columbia.edu)