July, 2, 2020, 京都--京都大学 工学研究科の野田進教授、吉田昌宏助教、メーナカ・デ・ゾイサ 講師、石崎賢司特定准教授、國師渡研究員らのグループは、北陽電機株式会社と共同で、フォトニック結晶レーザを搭載した光測距システム(LiDAR)の開発に世界で初めて成功し、フォトニック結晶レーザがスマートモビリティ応用に向けて極めて有効であることを示すことに成功した。
来たるべき超スマート社会におけるスマートモビリティ、すなわち、ロボット、農機、建機、自動車などの自動運転の実現のためには、光測距システム(LiDAR)は極めて重要である。このようなLiDARシステムの心臓部の光源には、小型・安価という特徴を持つ半導体レーザの活用が必須だが、従来の半導体レーザは、高出力時に、ビーム品質が著しく劣化するとともに、非点収差や、大きなビーム拡がりのために、複雑なレンズ系を用いてビームを整形してから用いる必要があり、部品やその精密な調整にコストがかかり、かつ空間分解能を劣化させるという課題があった。また、動作波長の環境温度依存性が大きいために、太陽光などの背景光の影響が大きくなるという課題もあった。
研究グループは、高出力動作時にも、高ビーム品質で、狭い拡がり角を持つビーム出射が可能で、動作波長の温度依存性が少ないフォトニック結晶レーザの開発を進めてきたが、今回、さらにフォトニック結晶レーザの性能を向上させるとともに、このレーザを搭載したLiDARの開発に世界で初めて成功した。この成果は、フォトニック結晶レーザが今後の超スマート社会を支える光源として極めて有望であることを示すものである。
研究成果は、さまざまな学会などで発表予定ですが、直近では、2020年7月13日~16日に開催される、米国光学会Advanced Photonics Congressにおいて発表予定。
また、今回開発に成功した、LiDARへ搭載可能なフォトニック結晶レーザは、京都大学 光・電子理工学教育研究センター内に設置した光・量子拠点より、MTA(Material Transfer Ag)を介して、世の中への提供が可能。
(詳細は、https://www.jst.go.jp/)