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理研、せん断音響波のナノスケールイメージング

June, 15, 2020, 和光--理化学研究所(理研)創発物性科学研究センター電子状態スペクトロスコピー研究チームの中村飛鳥基礎科学特別研究員、下志万貴博研究員、石坂香子チームリーダーらの共同研究グループは、超高速時間分解電子顕微鏡を用いて、結晶構造にせん断歪みを持つバナジウムテルル化物(VTe2)の薄片において、ナノメートル、ピコ秒の時空間スケールで伝搬するせん断音響波が、光誘起構造相転移(物質の構造が光によって他の構造へと変化)をきっかけとして生成されることを明らかにした。

研究成果は、超高速かつ微小な領域における音響波の新たな生成メカニズムを明らかにするもので、今後の高速音響デバイスの開発に役立つと期待できる。

音波や地震波などに代表される音響波は、物質内における音や熱の輸送を担っており、これまでの研究成果は超音波デバイスや熱流制御などに利用されている。近年ではフェムト秒レーザにより、高速な音響波の制御が可能となり、より高度な応用への期待が高まっている。

共同研究グループは、VTe2薄片にフェムト秒レーザを照射し、この物質の結晶構造を瞬間的に変化させた。その後の様子を超高速時間分解電子顕微鏡で観察し、通常の物質ではほとんど生成されることのないせん断音響波を観測した。このせん断音響波は、VTe2の結晶構造が持つ特有のせん断歪みが光により高速制御できることを反映しており、同様のメカニズムをさまざまな歪みを持つ物質に適用することで、微小高速領域における音響波の制御の可能性が広がると考えられる。

研究成果は、Nano Lettersに掲載された。
(詳細は、https://www.riken.jp)