June, 12, 2020, St. Petersburg--ITMO大学を含む国際研究グループは、太陽電池とLEDsの効率を大幅に高める可能性がある方法を提案した。研究グループは、主要な活性層に取り組むのではなく、電子輸送に関与するデバイスの補助層を増やすことでこの成果を達成した。研究成果は、Advanced Functional Materialsに発表された。
太陽電池の効率、コスト、耐久性は活性層だけでなく、補助層にも依存している。同時に製造コストを下げながら、その効率を高めることで、われわれはデバイスの競争優位性を強化することができる。
「たいていの場合、補助層は有機分子、ポリマあるいは多様な金属の酸化物でできている。これらの材料には様々な欠点がある。あるものは安定性が低く、別のものは高価で製造が難しい。また、水や環境の酸素分子に触れると劣化しやすい。とは言え補助層の機能の一つは、活性層を保護することである」とITMO大学シニア研究助手、Aleksandr Litvinは説明している。
少量のクエン酸を加えたカーボンドット
太陽電池の補助層は、電子輸送またはホール輸送タイプとなる。陽光が活性層に達すると、電子とホールのペア、つまり負電荷と正電荷が、その中に形成される。続いて、それらは付随する電極で取り込まれなければならない。ここが補助層が登場るところである。電子輸送は、活性層から負電荷を取り出して輸送する、ホール輸送層は、正電荷で同じ動作を行う。そのために、電荷が間違った電極に行くときに、それらの層は逆プロセスを阻止する必要がある。これらのプロセスは、活性層自体で電子-ホールペアの生成とともに、様々な程度の効率で進行する。
国際研究グループは、太陽電池とペロブスカイトベースのLEDsに補助層を形成する新しい方法を提案した。グループは、環境にやさしく、比較的安価な材料、カーボンドットを利用した。これは、研究室と産業条件の両方で簡単に入手できる。
「カーボンドットは、カーボンベースのナノ粒子で、直径2~10 nm。その表面は常に、この材料の特性を概ね決める様々な官能基を含んでいる。太陽電池におけるカーボンドットの応用は、新しいものではない。重要なことは、官能基を使うことでその表面を変更することである。表面のこれらグループの多様な比率が、カーボンドットの電子配置を決める。したがって、これを調整することで電極の作動機能の最適値、適用されるトランスポート層エネルギーレベルの最適値に到達できる。これにより、最大効率の最適配置が得られる。このアプローチは、様々なタイプのデバイスに汎用的である。これにより、発光ダイオード(LEDs)の動作効率向上に初めてカーボンドットの利用が可能になった」とAleksandr Litvinは説明している。
カーボンドット表面の官能基比率をどのよう変えることができるか。この研究では、これらナノマテリアルの合成には、2つの先駆体、クエン酸とエチレンジアミンを利用した。反応においてこれら2つの作用物質の比率を変えることで、最終的なカーボンドット表面に適した官能基の比率を変えることができる。
「この研究では、われわれは電子輸送層としてカーボンドットを利用した。それには、われわれは材料の作動機能を落とさなければならなかった。このため、合成する時に大量のエチレンアミンを使った、それは、ひいては大量のアミノ基がカーボンドット表面に現れる原因となった。これが電子の取出しと輸送を改善するのである。ホール輸送層を作るには、クエン酸量を増やすことで、その比率がそれに応じて逆転される必要がある」(Aleksandr Litvin)。
この方法で獲得されると、その材料は太陽電池だけでなく、LEDsの補助層にも利用できる。補助層は、ほぼ同じ構造であるが、そこでのプロセスは逆である。電子とホールは活性層から除去される必要はないが、その代わりに、電子-ホールペアを造るために活性層に注入される。活性層におけるその組み合わせが、発光を確実にする。両方の場合、研究グループは、、上述のカーボンドットからできた補助層を利用して造ったデバイスの効率を大幅に向上させた。
「デバイスが作製され、その特性がテストされた。ペロブスカイトベース太陽電池の場合、効率は17.3%から19.5%へ高めることができた、ほぼ13%増である。LEDsの場合、発光層の材料によるが、外部量子効率(注入された電子数に対するLEDによって放出されるフォトン数の比率)は、2.1~2.7倍増加した」とAleksandr Litvinは説明している。
(詳細は、https://news.itmo.ru)