June, 9, 2020, Sydney--簡素なタイプのレーザを見直すことで研究者は、信じられないような短周期でエネルギー量を指数関数的に増やす方法を発見した。潜在的なアプリケーションは眼や心臓の手術、あるいは繊細な材料の加工である。
シドニー大学フォトニクス・光科学研究所所長、Martijn de Sterke教授は、「このレーザの特徴は、パルス幅が1秒の1兆分の1以下になるに従い、そのエネルギーは天井知らずに上昇することだ」とコメントしている。
「このため、新開発のレーザは、短く強力なパルスを必要とする材料加工に理想的な候補となる。一つのアプリケーションは、角膜手術にある。これは、眼から生地を静かに除去することに依拠している。これには、表面を加熱せず損傷しない強い短パルスが必要である」。
研究成果は、Nature Photonicsに発表されている。
研究チームは、通信、計測、分光学で一般的な単純レーザ技術に立ち返ることでこの素晴らしい成果を達成した。これらのレーザは、ソリトン波としてしられる効果を利用する。これは、長距離にわたりその形状を維持する光の波である。
ソリトンは、英国の産業運河で、19世紀初めに初めて確認されたが、光ではなく水の波にである。
物理学部のDr Antoine Runge、論文の筆頭著者は、「光のソリトン波がその形状を維持するとは、通信や分光学を含む広い範囲のアプリケーションでそれが優れていることである」とコメントしている。
「とは言え、このソリトンを生み出すレーザは、簡単に造れるが、あまりパンチ力はない。製造で利用される高エネルギー光パルスを生成するには全く違う物理システム、高価なシステムが必要になるからである」。
米国Nokia Bell Labsシリコンフォトニクス部長、Dr Andrea Blanco-Redondoは「ソリトンレーザは、この短バーストを達成する非常シンプルでコスト効果の優れたロバストな方法である。しかし、今まで、従来のソリトンレーザは十分なエネルギーを供給できなかった。
われわれの成果は、ソリトンレーザをバイオメディカルアプリケーションに役立つようにする可能性がある」と話している。同氏は、以前、シドニー大学Nano Instituteにいた。
この研究は、2016年に発表された成果に基づいている。
レーザ物理学における新しい法則
通常のソリトンレーザでは、光のエネルギーはパルス幅に反比例する、これは、方程式E = 1/tで証明されている。光のパルス時間を半分にするなら、得られるエネルギーは2倍になる。
4次ソリトンを使うと、光エネルギーは、パルス幅の3乗、E = 1/t3に反比例する。つまり、パルス時間が半分なら、その時間に供給するエネルギーは8倍になる。
「われわれの研究で最も重要なのは、レーザ物理学における新しい法則のこの証明である。E = 1/t3を示し、これが今後レーザへの適用の仕方を変えることを望んでいる」とDr. Rungeは話している。
この原理実証によりチームは、より強力なソリトンレーザを実現できる。
Dr Blanco-Redondoは、「この研究でわれわれは、1秒の1兆分の1のパルスを生成したが、それよりもはるかに短くすることを計画している」と言う。
「われわれの次の目標は、フェムト秒時間幅のパルスの生成だ。これは、ピークパワーが数100 kWの超短パルスレーザである」(Dr Runge)。
「高いピークパワーは必要だが、基盤の材料を損傷しないようにするとき、われわれは、このタイプのレーザがレーザ光適用に新たな道を開くことができると考えている」(De Sterke)。
(詳細は、https://www.sydney.edu.au)