Science/Research 詳細

磁化がゼロでも現れる特殊な磁気光学現象

June, 3, 2020, 東京--通常の物質では、内部を透過する光の進む向きを逆にしても透過率は変化しない。しかし、キラリティ(鏡に映した前後の姿が、回転するだけでは重ならない性質)と磁化を併せ持つ物質では、光が進む向きを逆にすると透過率が変化する。この現象を「磁気キラル二色性」と呼ぶ。東京大学の佐藤樹大学院生、有馬孝尚教授らのグループは、磁化を持たない物質でも磁気キラル二色性を示す可能性があると考え、実際に、チタンとマンガンの複合酸化物の内部を進む光の透過率を測定し、磁気キラル二色性の存在を明らかにした。すなわち、この物質には表側と裏側の区別が存在することになる。さらに、電場と磁場をうまく作用させることで表と裏を入れ替えることにも成功した。

今回の発見は、磁化が全くない物質においても、磁気キラル二色性という一種の磁気光学現象が出現しうることを明確に示すものである。現在のところ、磁気キラル二色性の存在が確認された物質はそれほど多くない。この研究によって、磁気キラル二色性を探索する物質群の範囲が広がるほか、人工的な磁性超格子の設計指針にも役立つと期待される。

研究成果は、米国物理学会学術誌「Physical Review Letters」にオンライン版に公開された。

(詳細は、http://www.k.u-tokyo.ac.jp)