May, 28, 2020, St. Petersburg--1つの研究の成果が3つの異なる技術分野で重要なアプリケーション結果となるのは普通ではない。ITMO大学物理学者とFar Eastern Federal University (FEFU)の研究者は、ペロブスカイトのレーザプロセシングについての一連の実験を成功させた。研究グループは、その成果を利用して、どんな色の太陽電池でも作れる方法を示した。また将来の光トランジスタ用の数100万のナノレーザを量産する方法、意図したものだけが読み取れる情報を書き込む方法を示した。研究成果は、Smallに発表された。
ペロブスカイトは特殊な結晶構造の材料である。19世紀半ば、ウラル地域に鉱物として初めて発見された。カルシウム、チタンおよび酸素原子で構成されている。それ以来、ペロブスカイトは非線形オプティクスと半導体製造の両方に応用されている。現在、太陽電池産業とフォトニクスの分野で急速に基盤を築きつつある。2013年、これらの材料を利用する研究が科学のトップ10ブレイクスルーとなり、新しい有機-無機ペロブスカイトは、すでにシリコンやGaAsと競合している。
ペロブスカイトは、放出する光波のサイズよりも小さなレーザを造るためにも利用できる。同時に、これらの光源は簡単に可視光帯域に調整できる、つまり多様な色にできる。しかし代償を払わなければならない。サイズが数十ナノメートルの微小ペロブスカイト構造を作るのは非常に難しい。
「ペロブスカイトは、標準的なナノ構造化手順の影響を受けやすい。シリコンあるいはGaAsからナノ構造を作るために、われわれは気相または液相エッチングを使う。しかし、ペロブスカイトではそれが使えない。試薬が材料を劣化させやすいからである」とITMO物理学・工学部シニア研究者、Sergei Makarovは説明している。
レーザエッチング
エッチング試薬への高い感受性は別にして、ペロブスカイトはもう1つ特徴がある。非常に低い熱伝導性である。ペロブスカイトは、ガラスよりも著しく熱伝導が悪い。したがってITMOとFar Eastern Federal University (FEFU)の研究者は、レーザでペロブスカイトを加工する方法を提案した。
「強力なパルスレーザでGaAsなど、従来の半導体にナノ構造を作ることは非常に難しい。熱があらゆる方向に散乱し、全ての細く鋭いエッジが、この熱によって歪めらるからである。ペロブスカイトは熱伝導性が悪いので、われわれのパタンは、非常に正確かつ小さくできた」。
研究チームは、フェムト秒レーザと正確な位置決めシステムを使ってFEFUで加工された材料を準備した。ナノ構造化に多くの経験をもつVladivostokの研究者が、特殊プロファイルのレーザビームを作った。
「ペロブスカイト材料の構造、化学組成と他の特性に注意を払い、われわれは独自のレーザ加工技術を提案した。加熱など有害な影響を避けるために、われわれは超短パルスレーザインパルスを使った。温度が材料の蒸発スポット、1600℃となる強度の利用を選択した。われわれは、周囲の材料に悪影響を出さないように、所定の領域で、層ごとに、均一かつ正確にペロブスカイトを除去することに成功した」とFEFUのAleksandr Kuchmizhakは説明している。
着色太陽電池、ナノレーザと情報書き込み
フェムト秒レーザからの超短パルスは、必要な微小領域にナノ構造をカットするが、広い範囲を加熱することはない。実験により、フェムト秒レーザは材料を切断するだけでなく、材料の光学特性に影響を与えることなく、数100nm程度の様々な形態の溝(グルーブ)を作製できることも分かった。
関連研究で、チームは、その新技術の複数のアプリケーションを説明している。まず、ペロブスカイトに情報を書き込む。特殊な条件でのみ読み取れるような方法で書き込むことができる。
「われわれは、ユーザ以外の誰にも見えないQRコードを書き込んだ。大きくもでき、微小にもできる。また、多層保護も可能だ。蛍光モードあるいは特殊な角度で照射された時にだけ読み取れるようにQRコードを書き込むことができる」とSergei Makarovは説明している。
しかし、それが全てではない。着色剤ではなく、レーザを使ってペロブスカイトの目に見える色を変えることができる。その材料は、作業次第で、黄色、黒、青あるいは赤に見える。
「表面に色をつけるために、レーザは、特殊な周期の格子のようにみえる特殊グルーブをエッチングする。これは構造的発色と言われており、着色剤ではなく、表面の構造によって色が生成される。これにより、虹のどんな色の太陽電池でも製造可能になる。最近の建築では、ビルの全表面を太陽電池でカバーすることができるが、モノトーンの黒いパネルを好む顧客はほとんどいない。着色太陽電池で、高いビルは黄色、赤あるいは青になり、しかも、その壁や屋根のすべてで発電する。確かに、効率は黒い電池と比較して低いかも知れないが、普通の壁と比べれば高い」とSergei Makarovはコメントしている。
最後に、第三のアプリケーションは光センサ用のナノレーザの製造である。将来的には、光コンピュータ向けになり、情報は電子ではなくフォトンの動作で転送される。そのような素子の高速、安価、簡素な製造は、光ベースのコンピュータ技術新時代に立ちはだかる問題の一つである。
「ナノレーザ光源は、微小スティックのようであり、通常は化学的に合成される。われわれの研究は、レーザの助けを借りてペロブスカイトから切り取れることを示している。これによりわれわれは、1分で数千、数万、いや数十万のそのようなスティックを作ることができる。しかも、その全てが同じ特性、共通の形状を持つ。将来的に、光チップの集積回路上にそのようなレーザをプリントできるようになると考えている」とSergei Makarovは話している。
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