May, 21, 2020, New York--コロンビア工科大学の研究チームは、触覚をもつ新しいロボットフィンガーを発表した。その指は、人の指に似た非常に高精度(<1㎜)で、大きな多曲面表面をカバーする。 「独立触覚センサと完全組込触覚フィンガーとの間に以前からギャップがあった。触覚センシングは、ロボット操作ではまったく普及していない」と機械工学部・コンピュータサイエンス准教授、Matei Ciocarlieは言う。同氏は、電気工学教授、Ioannis Kymissisと共同研究した。「この論文では、正確な接触位置、複雑な3D面で通常の力検出を持つマルチカーブロボットフィンガーを実証した」。 触覚センサを構築する現在の方法は、ロボットフィンガーへの組込が困難であることが証明されている。多曲面をカバーすることの難しさ、ワイヤ数の多さ、小さな指先端への適用の難しさなどを含む多重課題である。コロンビアエンジニアリングチームは、新しいアプローチを採用した。指の機能面をカバーする透明導波路層に埋め込んだ光エミッタとレシーバからの重複信号の利用である。 全てのエミッタとレシーバ間を移動する光を計測することで、極めて豊富なデータセットを得ることができる。これは、接触による指の変形に反応して変化する。チームは、分析モデルを必要としないで、接触位置、加えた正常な力を含む、純粋データ駆動ディープラーニング法がデータから有用な情報を引き出せることを証明した。最終結果は、完全組込、触覚を持つロボットフィンガーである。ワイヤ数が少なく、利用可能な製法で構築でき、高機能ハンドに容易に組み込めるように設計されている。 学生、Pedro PiacenzaとKeith Behrmanをリーダーとする研究は、IEEE/ASME Transactions on Mechatronicsに発表された。その新しい成果を可能にするために組み合わされる下層技術に2つの側面があることが実証されている。まず、このプロジェクトでは、研究者は触覚検知に光を使う。「皮膚」の下に、指は透明シリコーンでできた層を持つ。その中に研究者は、30以上のLEDsから光を照射する。指には、30以上のフォトダイオードも搭載されており、光がどのように跳びはねるかを計測する。指が何かに触れると、その皮膚はゆがみ、下部のの透明層の周囲で光が変化する。どの程度の光が全LEDから全ダイオードに行くかを計測することで、それぞれが接触について持つ情報は1000信号となる。光は湾曲空間でも跳びはねるので、これらの信号は指の先端のような複雑な形状もカバーできる。 「人の指は信じられないほど豊富な接触情報をもたらす、皮膚の1平方センチ当たりで400を超える微小タッチセンサである。われわれの指から可能な限り多くのデータを得ようとしたモデルはそれであった。指の全側面ですべとの接触をカバーすることは非常に重要であり、われわれは基本的に盲点のない接触ロボットフィンガーを構築した」とCiocarlieは説明している。 次に、チームは、このデータをマシンラーニングアルゴリズムで処理されるように設計した。信号が非常に多く、そのすべてが部分的に他と重なっているので、データは複雑すぎて人手で解釈することはできない。幸い、現在のマシンラーニング技術で、研究者が関心があるデータを抽出できるようになる。指が触れているところ、触れているモノ、どの程度の力が加わっているかなど。 「われわれの成果は、ディープニューラルネットワーク(DNN)が非常に高精度にこの情報を抽出できることを示している。われわれのデバイスは、AIアルゴリズムともに使われるように最初から設計された真の触覚フィンガーである」とData Science InstituteのKymissisは説明している。 またチームは、そのフィンガーがロボットハンドに実装できるように構築した。そのシステムをハンドに搭載することは簡単である。この新技術により、フィンガーはほぼ1000信号を収集するが、それをハンドに接続するワイヤは、14本しか必要でない。また、複雑なオフボードエレクトロニクスは必要でない。ラボには、すでにこれらのフィンガーを実装した2つの高機能ハンドがあり、1つは3フィンガー、他方は4フィンガーである。次にチームは、接触データおよび固有受容性データに基づいて、これらのハンドを使い高機能操作能力を実証する予定である。 「高機能ロボット操作は、製造や物流などの分野で必要とされている。また長期的には、その技術の一つは、ヘルスケア、サービス分野など、他の分野で個人化ロボットアシスタントを実現するためにも必要になる」とCiocarlieは話している。