May, 11, 2020, Pasadena--Caltechの情報科学技術、応用物理学Ted and Ginger Jenkins教授、Kerry VahalaがNature Photonicsに発表した論文で、MEMSデバイスの製造と全く同じように、シリコンベースの材料から構築したレーザジャイロスコープを説明している。新しいタイプのジャイロスコープは、ジャイロスコープのベンチマークと考えられているもの、つまり地球の回転を計測する能力を達成している。
光ジャイロスコープは航空機ナビゲーションシステムなどのアプリケーションで用いられており、一方MEMSジャイロスコープはスマートフォンのような機器にも使われている。過去数10年、研究者はこれら二つの技術のギャップを埋め、新しいタイプのジャイロスコープが作製可能かどうかを考えてきた。つまりレーザジャイロスコープの精度と、MEMSジャイロスコープの作りやすさを統合することである。Caltechの研究チームは、各々の最高特性の一部を1つのデバイスに統合する光ジャイロスコープを開発した。
10年前に変化が始まった。シリコンベースの光共振器と導波路の性能改善で著しい進歩があったからである。
全ての光ジャイロスコープは、Vahalaが開発したものも含めて回転計測にSagnac 効果を利用している。リング上のパスの周りを反対方向に進む2つの光波は、同じ伝搬時間をもつ。しかし、そのパスが回転すると、回転しているパスの特定点に到達する時間が、個々の波で違う。この差で回転率を計測し、2つの光波の干渉を計測することで極めて正確な判定が可能になる。
光ジャイロスコープには2つのバージョンがある。レーザジャイロスコープでは、リング形状のパスは、一連の個別ミラーでできており、光がそのミラーから跳ね返る。それに対して、ファイバ光ジャイロスコープは、数100あるいは数千メートル長の光ファイバケーブルスプールを使用する。
Vahalaのジャイロスコープでは、パスは円形シリカディスクであり、誘導ブリルアン散乱というプロセスにより、ディスクの高周波振動でレーザ光が生成される。
Vahalaのジャイロスコープの短い光パスがデバイスの小型化に役立っているが、それは結果的に低感度にもなりうる。Yu-Hung Laiによると、それを補償するに光は「リサイクル」される。「光がパスを何度も回転できるにすることで、強力なSagnac効果と回転に対する感度向上を実現する」と同氏は説明している。
また、Myoung-Gyun Suhによると、レーザ動作は、ディスクの光損失を補償することでこの感度を一段と高める。
MEMSジャイロスコープに関しては、そのようなジャイロの感度向上力に加えて、そうしたシステムは可動部分がなく、振動や衝撃への耐性が極めて高い。その障害耐性は、実際、チップスケール光ジャイロスコープへの関心の主因の1つである。その究極的物理サイズは、MEMSデバイスよりも大きくなりそうである。
Vahalaによると、地球の回転を計測する能力は、チップスケールジャイロスコープの興味深いベンチマークである。計測を難しくするのは、レートが非常に低いことでもある。それがどの程度であるかを説明するために同氏は、アイススケーターの1回のスケートでのスピンを考えるが、1日に1回のフルターンになるという。
同氏の研究室は、これらのデバイスの研究を続け、暫定的実験事実によると、デバイスは著しく高感度になる、同氏は話している。
「われわれは、性能を10~100倍改善したい。その時点で、これらのデバイスは、大半のMEMSジャイロスコープの性能を上回る。理論的には、これは可能である。従来の光ジャイロスコープはMEMSデバイスよりも何桁も性能が優れているからである」と同氏はコメントしている。
(詳細は、https://www.caltech.edu//a>)