April, 24, 2020, Espoo--VTT研究チームは、量子コンピュータの開発で大きな飛躍を可能にする新しい電子冷凍技術の開発成功を実証した。現在の量子コンピュータは、 多様なヘリウム同位体の混合に基づいた非常に複雑で大型の冷却インフラストラクチャを必要とする。新しい電子冷却技術は、これら低温液体混合を置き替え、量子コンピュータの小型化を可能にする。
VTT Technical Research Centre of Finlandの研究チームは、融合のように、同じポイントを通じて冷却と熱絶縁が効果的に機能する新しい純粋な電子冷凍法を開発した。実験では、研究チームは、そのようなジャンクション(融合)からシリコン片(ピース)を宙に浮かせ、一方のジャンクションから他方へ、そのシリコンピースを通して電流を印可することでその物体を冷却した。電流がシリコン物体の熱力学的温度を環境温度から40%下げた。この発見は、例えば、将来の量子コンピュータの小型化に利用できる。冷却インフラストラクチャをを大幅に簡素化できるからである。研究成果は、Science Advancesに発表された。
VTTのリサーチ教授Mika Prunnilaは、「この新発見の電子冷却法は、量子コンピュータの小型から、セキュリティ分野の超高感度放射能センサまで、いくつかのアプリケーションで利用できる」とコメントしている。
高感度電子デバイス、光デバイスの中には低温動作を必要とするものがある。超伝導回路から構築される量子コンピュータは、絶対零度付近(-273.15 ℃).の熱力学的温度での冷却を必要とする。
現在、超伝導量子コンピュータは、いわゆる希釈冷凍機で冷却されている。これは、低温液体のポンピングをベースにした多段冷凍機である。この冷凍機の複雑さは、特に最冷段に起因するものであり、その運用は、多様なヘリウム同位体混合物のポンピングに基づいている。現在の希釈冷凍機が商用技術であるとは言え、まだ高価で大型の科学的装置である。VTT研究者が開発した電子冷却技術は、その複雑な最冷部を置き替え、それによって複雑さ、コストとサイスを大幅に下げることになる。
その新しい方法は、ビジネスの世界でも関心を生み出している。
「実証された冷却効果は、シリコンチップ上の量子回路、大型冷蔵庫で能動冷却に使える。言うまでもなく、Blueforsは、この新しい電子冷凍機開発に大きな関心をもって注視している」とBluefors Oy、Chief Sales Officer、David Gunnarssonはコメントしている。同社は、量子システムやコンピュータ向けの冷凍ソリューションの会社。
研究チームは、熱を1つの場所から別の場所へ電子電流で追いやる効率的、実用的な方法を探していた。最も効率的なソリューションは固体融合(solid junction)によるもので、そこでは高温電子が短い原子スケールポテンシャル障壁を乗り越える。このアプローチの課題は、熱が電子だけで運ばれるのではなく、原子格子振動の量子、つまりフォノンも大量の熱を運ぶことである。熱い部分と冷たい部分の間を移動するフォノンは、特に短い距離では、温度差を非常に効果的に平坦にする。
最も効率的な電子冷却法は、常に最悪のフォノンヒートリークになり、それにより全般的な冷却では成果はゼロとなるようだった。VTT研究チームは、この一見、基本的な問題の直接的な解は、実際に存在すると仮定した。つまり、ある接合材が、熱い電子を透過しながらフォノンの伝搬を阻止できると考えた。
チームは、半導体-超伝導接合を使ってシリコンチップを冷却する効果を実証した。これらジャンクションでは、超伝導体の禁じられた電子状態が障壁を形成する、それを超えて半導体からの電子は、熱を放出する。同時に、接合自体はフォノンを効果的に散乱、あるいは阻止するので、電子電流は、接合に大きな温度差を実現する。
VTT研究者、Emma Mykkänenは、「この冷却効果は、多くのたような設定、例えば分子接合で観察できると考えている」と話している。
(詳細は、https://www.vttresearch.com)