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二次元材料WS2のホットな電子がクールになるまで

April, 21, 2020, 札幌--北海道大学電子科学研究所の孫泉特任准教授と三澤弘明特任教授は,中国北京大学物理学科,及び中国科学院との国際共同研究により,高性能なFETトランジスタ,光検出器,そしてレーザなどへの応用が期待される二次元材料・二硫化タングステン(WS2)に光照射したときに生成するホットエレクトロンの超高速な現象の計測に成功した。

WS2にそのバンドギャップより大きな光エネルギーのポンプパルスレーザ(波長:410 nm)を照射すると,価電子帯の電子が励起され,伝導帯に過剰なエネルギーを持ったホットエレクトロンが生成する。次に,生成したホットエレクトロンにプローブパルスレーザ(波長:273 nm)を照射し,WS2の外(真空中)にホットエレクトロンを放出させ,その運動エネルギーを計測した。伝導帯に生成したホットエレクトロンは,熱を放出しながら極めて早い時間でエネルギー的に安定な伝導帯の底に緩和する。その緩和時間を計測するために,プローブパルスを照射するタイミングを少しずつ遅らせて計測するということを繰り返し行い, 0.3ピコ秒という極めて早い時間でホットエレクトロンが緩和することを見出した。また,熱的に緩和した伝導帯電子は,1ピコ秒程度で消失することも見出した。この消失は,主に伝導帯電子が欠陥準位に捕捉されるためであることを明らかにした。さらに,伝導帯電子の消失速度はパルスレーザ照射を繰り返すことにより加速されることが示され,レーザ照射によって欠陥準位の形成が加速されることを解明した。このような欠陥準位の生成は,光エレクトロニクス材料としてWS2を用いる際に性能劣化を誘起する大きな原因になると考えられる。今後,欠陥準位の生成を抑制する因子を探索するためにも本計測が重要な意義を持つと考えられる。

研究成果は, Nano Letters誌の電子版に掲載された。

(詳細は、https://www.hokudai.ac.jp/)