April, 15, 2020, Palaiseau--C2N(Centre for Nanoscience and Nanotechnology)の研究者は、ドイツのForschungszentrum Jülich (FZJ) および STMicroelectronics,の研究者と協力して、歪ゲルマニウム-スズ(GeSn)合金にレーザマイクロディスクを製造する新しい材料エンジニアリング法を実施した。チームは初めてグループⅣ化合物でレーザデバイスを実証した、これはシリコンに適合し、超低閾値、連続波励起で動作する。
光データ伝送により、従来の電子処理と比べてデータレートと範囲は大幅に高くなり、同時に省エネになる。データセンタでは、1メートル長の光ケーブルが標準になる。将来的にはボード間あるいはチップ間の短距離データ転送に光ソリューションが必要になる。シリコンベースのCMOS技術に適合する電気励起レーザは、非常に大きなデータレート達成に適している。
GeSn合金は、レーザのような光エミッタ実現に有望である。完全にグループⅣ半導体元素をベースにしたこの合金は、シリコン適合であり、CMOS製造チェーンに完全組込可能である。シリコンは、主流アプリケーション向け電子チップ製造に広く用いられている。今日、主要なアプローチは、可能な限り多くのスズをGeSn合金(10-16%の範囲)に導入することにある。得られた化合物は、そのバンド構造と直接整列し、それによりレーザ発振が可能になる。しかし、このアプローチには大きな欠点がある。シリコン上のゲルマニウム(歪緩和)基板とSnリッチGeSn合金との間の格子ミスマッチのために、高密度転移欠陥網が界面に形成される。したがって、レーザ発振域に達するには非常に高密度のパワーポンピング(極低温で数100 kW/cm²)が必要になる。
特別な材料工学に基づいた異なるアプローチを使うことで、C2N、Forschungszentrum Jülich (FZJ ドイツ) およびSTMicroelectronics研究チームは、誘電体Silicon Nitride (SiNx) でできたストレッサ層で完全エンカプセルされたGeSn合金のマイクロディスクでレーザ発振を達成した。このデバイスで、チームは、連続波励起で動作可能な合金でのレーザ発振を初めて実証した。レーザ効果は、CWおよびパルス励起下で達成、これは現在の最先端と比べて超低閾値である。研究成果は、Nature Photonicsに発表された。
このデバイスは、300 nm厚GeSn層を使用する。スズ含有量は5.4%、格子引張歪を造るためにSiNxストレッサ層でエンカプセルされている。アズグローン(as-grown)合金層は、当初は、レーザ効果をサポートしない間接バンドギャップ半導体で、質の劣るエミッタである。それがレーザ効果をサポートできる真の直接バンドギャップ半導体に変えられ、したがって、その引張歪をそれに適用することで効率的なエミッタになることを研究チームは証明した。加えて、その引張歪は、価電子帯エッジで、低密度状態となる。これはレーザ動作に達するために必要な励起準位を下げられる軽い正孔帶。スズの低濃度により、転移網は低密度であり、処理が簡単になる。ストレッサ層から活性領域へ高歪転移ができるように特定のマイクロディスクキャビティ設計を開発した。また、界面欠陥の除去、活性領域の熱冷却強化も目的。
このデバイスで研究チームは、70K以下でCWレーザ発振を初めて実証した。一方パルスレーザ発振は、温度100Kに達している。2.5 µm波長のレーザ動作は、ナノ秒パルス光励起で0.8 kW/cm2の超低閾値、CW光励起では1.1 kW/cm2。これらの閾値は、文献で報告されているよりも二桁低い。この成果は、グループⅣレーザをSiPhプラットフォーム上への集積に新たな道を開く。
(詳細は、https://www.c2n.universite-paris-saclay.fr)