April, 10, 2020, 東京--東京大学 生産技術研究所の増渕覚特任講師と町田友樹教授は、AI画像認識を使って、光学顕微鏡画像中のさまざまな破片から、目的の原子層を全自動で探索するシステムを開発した。
2005年に、2次元シート状の原子層が実現されて以来(2010年ノーベル物理学賞)、原子層を積み重ねることで、個々の特性とはまったく別の新しい機能を持つ複合原子層を生み出す研究が世界中で進められている。2−3種の原子層を3−5層積み重ねるだけでも、超伝導を示す素子や、電流を流すことで発光する素子、磁場により抵抗値が切り替わる素子が実現できるなど、予想を超える機能が得られることが報告されている。
しかし、一部の単原子層は一度の作業で得られる数が少ない上、透明度が高く目では捉えにくい場合も多く、熟練の研究者であっても、数千枚の光学顕微鏡像から数個の原子層を探し出すためには長時間が必要だった。この手作業が、新規材料開発の効率の低下を招く大きな要因となっていた。
今回開発したシステムは、この長時間かかる画像認識をAIに置き換えることで、六方晶窒化ホウ素(絶縁体)、二硫化モリブデン(半導体)、二テルル化タングステン(トポロジカル絶縁体)など、有用な特性を示す原子層を全自動で探索することが可能となり、研究者が探索作業に30分以上を費やしていた時間がほぼゼロへ大幅に短縮された。作業時間の短縮により水や酸素との反応による試料の劣化を抑えることも可能となる。今後、新規材料開発や物理現象発見などの効率が飛躍的に高まると期待される。
研究成果は、Nature Publishing Group発行の「npj 2D Materials and Applications」オンライン版に掲載された。
(詳細は、https://www.iis.u-tokyo.ac.jp)