April, 6, 2020, 東京--東京工業大学 物質理工学院 応用化学系の岩井梨輝大学院生、小西玄一准教授、京都大学 福井謙一記念センターの鈴木聡博士、九州大学、大阪大学、仏ナント大学の研究グループは、化学反応の経路を予測する理論計算の方法を用いて、凝集誘起発光色素(AIE色素)を設計・合成することで、溶液中では消光し、固体状態で100%に近い発光量子収率を示す色素の開発に成功した。
AIE色素は、一般的な蛍光色素と逆に、希薄溶液状態では発光せず、固体・凝集状態で強発光する蛍光色素。この性質を利用して、センサや分子イメージングなどへの応用が期待されている。研究グループは、励起状態において大きな構造変化を起こすことが知られている蛍光色素スチルベンの二重結合のまわりを炭化水素鎖で縛った橋かけスチルベンをモデルにして、溶液中で消光する化学反応経路を持つ分子構造を理論計算により探索した。見つかった色素分子を実際に合成すると、理論計算の予測通りの機能を示した。
この理論計算による方法は、従来の経験的な構造設計に代わる、AIE色素の簡便かつ強力な設計法であり、今後、情報科学との融合などにより、目的に適合した機能を持つ色素の開発への応用が期待される。
研究成果は、ドイツ化学会とWiley-VCHの総合化学雑誌『Angewandte ChemieWeb版に公開されました。
(詳細は、https://www.titech.ac.jp)