March, 27, 2020, 和光--理化学研究所(理研)開拓研究本部Kim表面界面科学研究室の數間惠弥子研究員、金有洙主任研究員らの国際共同研究グループは、「局在表面プラズモン共鳴現象(プラズモン)」によるナノメートル(nm)サイズの領域に局在した光によって、銀表面に強く吸着した酸素分子が分解する様子を単一分子レベルで観測し、その反応機構を明らかにした。
この研究成果は、プラズモンが引き起こす化学反応を設計し制御する指針となることから、新しい光触媒の開発に貢献すると期待できる。
持続可能な社会の実現に向けて、太陽光を有効利用する技術開発が求められている。ナノメートルサイズの金属に光を当てるとプラズモンの共鳴現象が起こり、光を金属表面近傍のナノ領域に集光できる。このプラズモンによる「ナノの光」は、光の高効率利用を可能にすると期待され、さまざまな応用が研究されている。近年、プラズモンが起こす化学反応が注目を浴びているが、反応機構については議論が続いており、応用研究への課題が多く残されている。
今回、国際共同研究グループは、走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いて、プラズモンのナノの光が起こす酸素分子の分解反応を、単一分子レベルで直接観測することに成功した。さらに、単一分子レベルの反応の定量解析と理論計算により反応機構を解明し、プラズモンによって生成したホットホール(正孔)が化学反応に寄与することを、単一分子レベルの観測により初めて示した。
研究成果は、科学雑誌『Angewandte Chemie International Edition』およびオンライン版に掲載される。
(詳細は、https://www.riken.jp)