March, 19, 2020, New York--コロンビア大学の研究チームは、原子厚の材料を使い、非常にローパワーで、振幅を変えることなく光の位相を操作す。これは、LiDAR、フェーズドアレイ、光スイッチング、量子および光ニューラルネットワークなどのアプリケーションを可能にする。
ナノスケールの光操作、つまりナノフォトニクスは重要な研究分野になっている。情報処理と通信のますます増え続ける要求に応える方法を研究者が、探しているからである。ナノメートルスケールで光を制御、操作する能力から多くのアプリケーションが生まれる。データ通信、イメージング、測距、センシング、分光学、量子および神経回路などである。
今日、シリコンが集積フォトニクスプラットフォームとして好んで使用されている、それが通信波長に透明であり、電気光学および熱光学変調能力、また既存の半導体製造技術に適合しているからである。しかし、シリコンナノフォトニクスは、光データ通信、フェーズドアレイ、LiDAR、量子および神経回路の分野で大きな進歩を遂げたものの、大規模フォトニクスをこれらのシステムに集積するには2つの大きな懸念がある。光帯域に対するますます拡大する要求と高い電力消費である。
既存の大きなシリコン位相変調器は、光信号の位相を変えるが、このプロセスは、高い光損失(電気光学変調)あるいは高い消費電力(熱光学変調)のいずれかの代償を払う。コロンビア大学のチームは、原子厚の材料、2D材料を使い、光位相を制御する新しい方法の発見を報告した。その振幅を変えることなく、消費電力は極めて少ない。
Nature Photonicsに発表されたこの新しい研究でチームは、パッシブシリコン導波路上にその薄い材料を置くだけで、既存のシリコン位相変調器と同等の強さで光位相を変えられることを実証した。光損失と消費電力は著しく少ない。
「位相変化に関連する高い光損失のために、光コヒレント通信における位相変調は、拡張が課題になっている。今回、われわれは、位相だけを変化させ、光技術の帯域を拡大する別の道を達成した」と研究チームリーダー、Michal Lipsonは話している。
遷移金属ジカルコゲナイド(TMDs)などの半導体2D材料の光学特性は、その励起共鳴付近に自由キャリアインジェクション(ドーピング)で、飛躍的に変わることが知られている。しかし、通信波長でTMDsの光学特性へのドーピング効果についてはほとんど知られていない。通信波長は、この励起子共鳴から著しく離れているが、その材料は透明であり、したがってフォトニック回路で利用できる。
コロンビアのチームは、低損失SiN光キャビティ上に半導体モノレイヤを集積し、イオン液を使ってモノレイヤをドーピングすることでTMDの電気光学応答を調べた。ドーピングによる大きな位相変化を観察したが、リングキャビティの伝送応答における光損失の変化は最小だった。モノレイヤTMDsの吸収の変化と比較してドーピング誘起の位相変化は、ほぼ125であることを示した。つまり、これはSi、III-V on Siを含むシリコンフォトニック変調器に一般に利用される材料で観察されよりも著しく高い、また同時に挿入損失は無視できるほどであるということである。
「これら薄いモノレイヤで強力な電気屈折率変化を観察したのはわれわれが初めてである」と論文の筆頭著者、Ipshita Datta、LipsonのPh.D学生は話している。「われわれは、低損失SiN-TMD複合導波路プラットフォームを利用することで、純粋な光位相変調を示した。そのプラットフォームでは、導波路の光モードがモノレイヤと相互作用している。したがって、シリコン上にこれらモノレイヤを置くだけで、われわれは同じ桁だけ位相を変えることができる。しかし、電力消費は10000倍少ない。これは、フォトニック回路の拡張、低消費電力LiDARにとって極めて有望である」。
研究チームは、強い電気屈折率降下の基本的な物理メカニズムを調べ、理解を深めようとしている。現在、その低損失で低消費電力位相変調器を利用して、従来の位相シフタを置き換えることに取り組んでいる。したがって、光フェーズドアレイなどの大きなアプリケーション、神経回路や量子回路の消費電力が低減する。
(詳細は、https://engineering.columbia.edu)