February, 19, 2020, 札幌--理化学研究所(理研)開拓研究本部Kim表面界面科学研究室のラファエル・ハクルビア基礎科学特別研究員、今田裕研究員、早澤紀彦専任研究員、金有洙主任研究員、北海道大学量子化学研究室の岩佐豪助教、武次徹也教授らの共同研究チームは、単一分子による共鳴ラマン散乱の可視化に成功し、その解析から、化学分析手法として重要な選択則を見いだした。
研究成果は、近接場光の分子によるラマン散乱過程やそれを用いたラマン分光法に関してある明快な理解を与える結果。これによって、触媒反応に代表される固体表面上における化学反応の解明などに重要な、単一分子の化学感度と分子・原子スケールの空間分解能とを両立する化学分析手法の確立に貢献すると期待できる。
ラマン分光法は、分子の種類を識別する化学分析手法として広く用いられている。近年、近接場光というナノスケールの光を用いて、単一分子の化学感度と分子・原子スケールの空間分解能が実現されたことから、研究開発が世界的に活発化している。しかしこれまでの研究では、単一分子によるラマン散乱過程の詳細が分かっておらず、化学分析手法として確立されるために必要な選択則が解明されていなかった。
共同研究チームは、独自に開発した光の照射と検出が可能な走査トンネル顕微鏡(STM)装置(光STM)を用いて、単一分子からの共鳴ラマン散乱を詳細に調べた。シグナル強度が従来よりも大きく向上した結果、単一分子のラマン分光マッピング(ラマン散乱の可視化)に成功した。さらに、理論的考察により、共鳴ラマン散乱の発生を支配している選択則を記述することにも成功した。
研究成果は、Nature Nanotechnologyオンライン版に掲載された。
(詳細は、https://www.riken.jp)