February, 14, 2020, Moscow--MIPTとValiev Institute of Physics and Technologyの研究チームは、市販入手可能なグラフェンでテラヘルツ放射の共鳴吸収を証明した。これは、効率的なTHzディテクタ設計への重要な一歩である。そのようなディテクタは、インターネットを高速化し、X線身体スキャンの安全な置き替えとなる。研究成果は、Physical Review Appliedに掲載された。
グラフェンオプトエレクトロニクス
2010年にAndre Geimと Kostya Novoselovが、グラフェンの類例のない電子特性研究でノーベル物理学賞を受賞して以来、この材料への関心は衰えない。グラフェンは、真の2Dである。1原子厚の炭素で構成されており、このことが、その特性が素晴らしいことの理由である。グラフェンは薄くて、機械的に強力で、ヘリウム原子にさえ不浸透であり、電気伝導性があって、熱伝導性も非常によい。グラフェン内の電子の高い移動性によりグラフェンは、THz領域で動作するものも含め、超高速フォトディテクタに有望な材料である。
THz放射は、生成も検出も等しく難しい。このため、「テラヘルツギャップ」という考えが生まれた。これは、電磁スペクトルのほぼ0.1-10 THz周波数帶を指している。この範囲で放射の生成と検出に効率的なデバイスは存在しない。とは言え、THz波は人類にとって非常に重要である。身体に害を及ぼさない。したがって医療スキャンではX線を置き換えることが可能である。また、THz波は、Wi-Fiを非常に高速にし、天文学研究にとってはよく研究されていない宇宙線を明らかにする。
光検出ではグラフェンは大きな潜在性はあるが、その単層だけではわずか2.3%の外部放射を吸収するだけであり、これは確実な検出には十分でない。これを回避する方法は、近視野グラフェンを強く局所化し、電磁波をグラフェン電子と結合させ、共振振動を励起する。結果としての電磁場と伝導電子の集合波は、表面プラズモンとして知られている。付随するプラズモン共鳴現象は、表面プラズモン波の励起により、強化された光吸収である。
残念ながら、この現象は、平面波で照射された伝導体の連続シートでは観察されない。プラズモン波は、フォトンの波と比べると短すぎるので、これら2つの波が同期しない理由がここにある。この相違に対処するには、金属格子をグラフェン膜の上方に設置する。それは、マイクロメートル以下の間隔の歯をもつ微小な櫛に似ている。
グラフェン、期待 vs.現実
グラフェンの生成には数十の技術が利用可能である。それらは、最終製品品質と労働集約に関して違いがある。グラフェンの高電子移動を称賛する研究者は、この材料の製造がいかに難しいかを軽視することがあった。
最高品質のグラフェンは、機械的剥離によって作られる。これは2つの粘着テープの間にグラフェンを置き、次に何度も繰り返して連続的に薄い層を剥がす。ある時点で、グラフェンのかけら、つまり単層グラフェンが現れる。その「ハンドメード」グラフェンは、MIPTなどの研究者が作ったカプセル化グラフェンベース共鳴T-波ディテクタなど、応用デバイスには最良の特性を持つ。残念ながら、機械的剥離で作られるグラフェンフレークは、直径がわずか数µmであり、作製に数ヶ月かかり、連続的なデバイス設計にはあまりに高価となる。
CVDというグラフェン合成には、より簡単でスケーラブルな代替技術がある。それは、特殊な炉で、分解ガス、通常メタン、水素、アルゴンの混合ガスを必要とする。そのプロセスは、銅あるいはニッケル基板上に形成されるグラフェン膜につながる。結果としてのグラフェンは、機械的剥離に比べると、特性が劣り、欠陥が多い。しかしCVDは現在、デバイス製造の拡張に最も適した技術である。
ロシアの物理学者は、そのような商用グレードのグラフェンがTHzプラズモン共鳴励起に十分なレベルであるかどうかのテストを始めた。これは、T波ディテクタに実用的な材料となる。
「実際、CVD製造グラフェン膜は、均一ではない。多結晶のように、それは多数の結合粒子でできている。各粒子は、完全に対称的な原子パタンの規則正しい領域である。欠陥とともに粒子境界が、そのようなグラフェンに働きかけるのは容易ではない」とMIPT院生、Elena Titovaは話している。