October, 29, 2019, Washington--ポツダム大学の研究チームは、初めて、1秒程度で中性子断層写真画像を撮った、これは以前の報告よりも一ケタ程度高速である。最近まで、この非侵襲的な技術の利用では、長い画像取得時間が主な障害だった。この技術を利用すると、植物の根と土壌間の水交換など動的3Dプロセスを研究することができる。
「迅速に画像を撮れると、われわれは前例のない詳細さで、根が水や他の栄養素を土壌から吸収する際に、関係する高速プロセスをとらえることができる」とポツダム大学研究チームリーダー、Christian Tötzkeは話している。「こうした根と土壌の相互作用の理解向上は、増え続ける世界の人口と限られたリソースからくる強い要求に応えるために役立つ」。
研究成果は、Optics Expressに発表された。研究チームは、中性子トモグラフィで記録的に速いイメージング時間をどのように達成したかを説明している。研究は、根が周辺の土壌の物理的、化学的特性に与える大きな影響を研究する取組の一環である。
「中性子は、水のような水素化合物も含め、水素に非常に敏感である。高速中性子イメージングを使って植物の根を可視化し、同時に土壌における配水の変化をマッピングする。また、人工あるいは自然の多孔質材料系における液体移送など、動的移送プロセスの研究にも使える」とTötzkeは話している。
例えば、高速中性子トモグラフィは、水圧破砕中に起こる動力学で新たな洞察を明らかにしたり、バッテリー内のリチウムの挙動を研究してバッテリの耐久性と安全性を高めるためにも利用できる。
根と土壌の相互作用をとらえる
植物がどのように水と栄養素を土壌から取り込むかは、根に隣接した土壌、つまり根圏の輸送特性に強く依存している。根と土壌の相互作用の理解向上には、科学者は、根圏における構造的、生物化学的変化が、水と栄養素の根への流れ込み方法にどのように影響するかをもっと知る必要がある。
中性子イメージングは、このアプリケーションに最適である。中性子が水素やリチウムなどの原子と相互作用する時、それらは強く可視化されるが、アルミニウムやチタンなどの金属は、ほとんど透明になるからである。このイメージングアプローチは、水素同位体も区別するので、重水として知られる同位体的に重い水分子を造影剤として使うことができる。このタイプの水には、植物は十分絶えられる。
しかし、中性子イメージングの相対的に遅い取得速度のために、水の吸収のような高速プロセスの時間分解3D研究への利用には課題があった。最近オープンになったInstitute Laue-Langevinのイメージングファシリティ、NeXT-Grenobleで利用できる中性子源は、より高速の中性子イメージングに必要なパワーを提供できる。
高速イメージング設定の開発
NeXT-Grenobleには、イメージング目的の世界最高の厳寒中性子束がある。しかし、この高流量を利用するには、われわれは取得パラメータを最適化する必要があった、それは利用可能な技術の限界への挑戦であった」とTötzkeは話している。
研究チームは高速イメージング向けにイメージングセットアップを開発した。これには、中性子を可視光に変換する極めて効率的なシンチレータスクリーンと高フレームレートの科学的CMOSカメラが含まれている。研究チームは、このセットアップを使って、ルビナス根系の水取込を研究した。根系は、一定速度で回転し、画像は連続的に撮られた。
「われわれが取得したデータは、取得レートだけでなくSNRおよび全般的な空間解像度に関しては期待を上回っており、土壌と水の根との相互作用の仕方を研究する上でこのアプローチが非常に適していることを確認した」とTötzkeは話している。
研究チームは、高速中性子トモグラフィの技術的な実用性を実証したので、特にこのアプリケーションに向けて、より高速なカメラ、一段と優れた回転ステージを設計する計画である。また、中性子束を調整して、この技術の時間分解能をさらに高めたいと考えている。高速イメージングセットアップは、研究者がそれを使って高速トランスポートプロセスを研究できるように、グルノーブルのNeXT計測器にも組み込まれる。