October, 1, 2019, 東京--東京大学他の研究グループは、高移動度有機半導体のプロトタイプであるルブレンの微結晶試料にポンプ―プローブ分光法を適用し、光キャリアに由来するテラヘルツ(THz)域の光学伝導度スペクトルを測定した。
そのスペクトルを結晶粒界でのキャリアの散乱を考慮して解析することにより、単結晶試料で得られる値とほぼ等しい、物質に固有の移動度を評価できることを示した。この手法を別の高移動度有機半導体C10-DNTT (2,9-didecyl-dinaphtho[2,3-b:2′,3′-f]thieno[3,2-b]thiophene)の微結晶試料にも適用し、その有効性を確認した。今後、この手法は、良質な単結晶FETが得られない有機半導体において、その物質に固有の移動度の予測に有効に活用できるものと期待される。
発表の要点
・有機半導体の微結晶試料にフェムト秒ポンプ-プローブ分光法を適用し、光キャリアに由来するテラヘルツ域の光学伝導度スペクトルを精密に測定した。
・高移動度有機半導体のプロトタイプであるルブレンの微結晶試料の光学伝導度スペクトルを、結晶粒界におけるキャリアの散乱を考慮して解析することにより、単結晶でのキャリア移動度の予測が可能であることを実証した。
・新たに合成される有機半導体の多くは微結晶試料として得られるため、本手法は高移動度有機半導体の探索に有効に活用できるものと期待される。
研究成果はApplied Physics Letters」に掲載された。
(詳細は、https://www.aist.go.jp/)
研究グループ
東京大学大学院新領域創成科学研究科の岡本博教授(兼産業技術総合研究所産総研・東大先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ有機デバイス分光チーム ラボチーム長)、宮本辰也助教(兼産業技術総合研究所産総研・東大 先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ 客員研究員)、及び、竹谷純一教授(兼マテリアルイノベーション研究センター(MIRC)特任教授、産業技術総合研究所産総研・東大先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ客員研究員、物質・材料研究機構国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(WPI-MANA)超分子グループ 主席招聘研究員)他。