August, 8, 2019, Geneva--磁界と電界を利用して赤外およびテラヘルツ波を制御する機能は、物理学の大きな課題であり、オプトエレクトロニクス、通信および医療診断を変革するものである。
2006年から、ある理論が、磁界で、炭素原子の単原子層、グラフェンが使えることを予言している。オンデマンドでテラヘルツと赤外光を吸収するだけでなく、円偏光の方向も制御できるとしている。ジュネーブ大学(UNIGE)と、マンチェスター大学の研究チームは、この理論の試験に成功し、予測された成果を達成した。
研究成果は、Nature Noanotechnologyに発表された。それによると、研究チームは、赤外とテラヘルツ波の効率的な制御法を見いだした。また、グラフェンが、その当初見込を維持し、地上でも宇宙でも、将来の材料に向かって進んでいくことも示している。
「いわゆるディラック物質が存在する。電子が、光粒子、フォトンと同様、質量がないかのにように振る舞う」とUNIGE量子物質物理学部、研究者、Alexey Kuzmenkoは説明する。そのような物質の1つはグラフェン、ハニカム構造に整列された単層炭素原子、グラファイトに類似である。
グラフェンと光の相互作用は、この物質が赤外とテラヘルツ波の制御に使えることを示唆している。「それは、オプトエレクトロニクス、セキュリティ、通信、医療診断にとって、大きな前進てある」と研究者は指摘している。
実験で旧い理論を確認
2006年の理論的予測は、ディラック物質が、磁界に置かれると、非常に強いサイクロトロン共鳴を生成すると仮定した。「荷電粒子が磁界にあると、それは円形軌道で動き、周回周波数、つまりサイクロトロンで電子エネルギーを吸収する。例えば、CERNの大型ハドロン衝突型加速器で起こるようにである。また、グラフェンの電子のように、粒子が電荷を持つが質量を持たない場合、光の吸収は、最大になる」とAlexey Kuzmenkoは説明している。
この最大吸収を証明するために、物理学者は高純度のグラフェンを必要としていた。長い距離を移動する電子が、不純物や結晶欠陥で散乱しないようにするためである。しかしこのレベルの純度と格子秩序は極めて入手困難であり、グラフェンが別の2D材料、窒化ホウ素にカプセル化されているときにのみ達成できる。
UNIGE研究チームは、André Geim(グラフェン発見で2010年ノーベル物理学賞)をリーダーとするマンチェスター大学のグループと協力して、極めて高純度のグラフェンサンプルを開発した。これらのサンプルは、このタイプのグラフェンとしては並外れて大きいが、十分に確立された技術でサイクロトロン共鳴を測るには小さすぎた。これが、ジュネーブの研究者が特殊な実験セットアップを構築した理由である。赤外とテラヘルツ照射を磁界の小さな高純度グラフェンサンプルに集中するためである。「実験の結果は、2006年理論を追認した」とAlexey Kuzmenkoは付け加えている。
カスタム制御偏向
結果は、ピュアグラフェン層が使用されると、大きな磁気-光効果が本当に起こることを初めて実証した。「最大の可能な赤外光の磁気吸収は、単原子層で達成された」とAlexey Kuzmenkoは言う。
加えて、物理学研究チームは、どの円偏光、左か右が吸収されるかを選択できることを確認した。「自然の、つまり本来のグラフェンは電気的にニュートラルで、偏向に関係なく、全ての光を吸収する。しかし、プラスかマイナスに、帯電したキャリアを導入すると、どの偏向が吸収されるかを選択できる。また、これは、赤外とテラヘルツ域の両方で有効である」と同氏は続けている。この機能は、特に薬学で重要な役割を果たす。薬学では、ある重要薬剤分子が、偏光方向に依存して光と相互作用するからである。興味深いことに、この制御は太陽系外惑星で生命探査に有望と考えられている。生体物質に固有の分子キラリティというシグネチャを観察できるからである。
研究チームは、テラヘルツ範囲に強力な効果を観察するために、磁界適用で十分であることを確認した。これは、すでに安価な永久磁石で生成可能だからである。
理論が確認されたので、研究チームは、継続してテラヘルツと赤外光の磁気調整可能光源とディテクタに取り組む。
(詳細は、https://www.unige.ch)