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新しい薬剤デリバリシステムでマウスの腫瘍抑制

July, 10, 2019, Cambridge--がん治療はますます高度になっているので、様々な化学成分の薬剤を多数同時にデリバリする、より改善された薬剤デリバリシステムが必要である。

ハーバードSEASの研究チームは、ナノメートルサイズ薬剤デリバリ手段を作る方法を開発した。これは、現在の方法よりも効率的に多数の薬剤を同時にデリバリできる。同システムは、以前には経口デリバリだけが可能であった非常に低用量の薬剤を使い、マウスの乳ガンを87%、94%抑制した。
 研究成果は、Proceedings of the National Academy of Sciencesに掲載された。

「われわれはこれらのハイブリッドナノビークルを使い、抗ガン剤の新たな組合せを、静脈注射でマウスにデリバリすることができる。また、乳ガンに対して注目すべき有効性が見られる。この研究により,ガン治療で、以前にはデリバリできなかった化合物の利用が可能になり、広範なバイオメディスカルアプリケーションでさらなる発展の基礎になる」とSEAS客員教授、Mingtan Haiはコメントしている。

これらの薬剤デリバリビークルは、基本的にナノ粒子内のナノ粒子である。主要ビークルは,ポリマソームとして知られる人工小胞。ポリマソームは、保護のための油性シェルを備えており、それが目標に到達するまでそれを保護する。各ポリマソームの内部は、薬剤を搭載した金ナノロッドと多孔ナノ粒子である。これらのナノ粒子は、同時に多種の薬剤を保持して,放出することができる。

金ナノロッドは、小胞に機能を付加する。近赤外光で照射されると、そのナノロッドは加熱し、ポリマソームを破裂させ、薬剤が直ちにデリバリされる。

「超高速薬剤デリバリは、薬剤耐性のあるガン細胞を葬る助けになる」とHaiは言う。

研究チームは、HER2乳ガンのマウスで薬剤デリバリビークルをテストした。乳ガン治療で最も効果がある化学療法薬、ドセタキセル、ラパマイシンとアファチニブの薬剤のトリプル組合せが乳ガンを94%、87%抑制したことを確認した。投薬量は、5および2.5 mg/kgであった。

「薬剤と薬剤治療がますます高度になるにつれ、薬剤デリバリシステムも同じようにならざるを得ない」とSEAS物理学・応用物理学Mallinckrodt教授、David Weitzは言う。「この研究は,新しい合成や処方技術がどのように活用され、様々なデリバリビークルと結びついて、目標とする薬剤デリバリで、どのようにパフォーマンスが改善されたかを示す好例である」。

次は、研究者は臨床試験を考えている。