July, 4, 2019, 横浜--横浜国立大学 大学院工学研究院/先端科学高等研究院の小坂英男教授、同 大学院理工学府 博士課程前期の鶴本和也大学院生らは、ダイヤモンド中の炭素同位体を量子メモリーとして用い、量子テレポーテーションの原理を応用して、光子の量子状態を維持したまま情報漏えいによる盗聴の可能性なく量子メモリーに転写することに世界で初めて成功した。
研究グループは、ダイヤモンド中の窒素空孔中心(NV中心)の電子と近傍の炭素同位体の核子を量子もつれ状態にし、光子の吸収による核子への伝令信号付き量子テレポーテーション転写を実現した。これにより多数の量子メモリーに光子の量子状態を個別に転写および一時保存でき、量子中継の処理能力を格段に向上できる。今回の研究では、量子中継における量子状態の遠方への転送だけでなく、量子状態の保存にも量子テレポーテーション原理が有効であることが示された。また、同位体濃度制御で量子メモリーを大容量化できる上に、炭素核子は光による書き込み・読み出しに対して安定なため、量子中継処理の高速化、高信頼化に有効。
研究成果は、量子暗号通信を量子中継でネットワーク化した量子インターネットにより、量子コンピューター、量子シミュレーター、量子センサーなどの量子接続を可能とし、超高速かつ秘匿性を保つ量子計算や高精度な量子計測などへの道を拓くと期待される。
研究成果は、Communications Physicsにオンライン掲載された。
(詳細は、https://www.ynu.ac.jp/)