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有機ELの新たな発光機構を発見

June, 10, 2019, 東京--理化学研究所(理研)開拓研究本部Kim表面界面科学研究室の木村謙介実習生(東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻博士課程3年、日本学術振興会特別研究員)、三輪邦之客員研究員、今田裕研究員、金有洙主任研究員らの国際共同研究グループは、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)デバイスにおいて重要な役割を担う三重項励起子を低電圧で選択的に形成する新たな機構を発見した。
 研究成果は、有機ELデバイスのエネルギー効率の向上や、発光材料の選択肢を広げることにつながると期待できる。
 有機ELは有機分子に電流を流すことで発光する現象。有機ELデバイスでは、電子と正孔が有機分子上で束縛されることで生成される励起子からの発光が用いられており、スマートフォンの画面などに応用されている。発光源となる励起子の形成は、有機ELデバイスの動作原理の中核をなす物理現象であり、新たな励起子形成方法の発見は有機ELデバイスの革新につながる。
 今回、国際共同研究グループは、独自に開発した走査トンネル顕微鏡(STM)発光分光装置[2]を用いて、マイナスに帯電した分子の発光特性を単一分子レベルで詳しく調べた。その結果、分子内に余剰電子が存在することで電子間の相互作用が働き、スピン選択的な電子伝導が生じて三重項励起子が低電圧で選択的に形成されることを突き止めた。
 研究成果は、英国の科学雑誌『Nature』(6月13日号)の掲載に先立ち、オンライン版(6月5日付け:日本時間6月6日)に掲載された。
(詳細は、http://www.riken.jp/)