May, 28, 2019, Münster--コンピュータは、伝統的に、メモリとプロセッサユニットが分離されており、その結果、全てのデータは、両者の間を行き来しなければならない。この点、人の脳は、最新のコンピュータよりも遙か先にある。同じ場所で情報を処理し蓄積するからである。シナプス、つまりニューロン間の接続は、脳に1000兆ある。
Universities of Münster (ドイツ)、 Oxford and Exeter (both UK)からなる国際研究チームは、人の脳に似たコンピュータ実現に道を開くハードウエアの開発に成功した。研究チームは、人工ニューロンのネットワークを含むチップを造ることができた。これは光で動作し、ニューロンとシナプスの振る舞いを真似る。
研究チームは、そのような光ニューロン・シナプスネットワークが情報を「学習」し、脳と同様に、これをコンピューティングやパターン認識の基礎として使えることを実証することができた。システムは、光のみで機能し、従来の電子では機能しないので、データ処理は何倍も高速になる。「この集積フォトニックシステムは、実験的成果である。そのアプローチは後に、多くの異なる分野で大量のデータパターンの評価に利用できる。例えば、医療診断などだ」とミュンスター大学、Wolfram Pernice教授はコメントしている。研究成果は、Natureに発表された。
いわゆる神経形態学網に関するほとんどの既存アプローチは、エレクトロニスに基づいている。一方、光システムでは、フォトン、光粒子が使用されている。しかしまだ初期段階である。研究チームが紹介した原理は以下のようになる。
光を伝達し、光マイクロチップに作製できる光導波路を相変化材料に組み込む。相変化材料は、すでに再書き込み可能DVDsなどストレージ媒体に利用されている。これらの相変化材料の特徴は、光学特性を飛躍的に変えることである。これは結晶化されているかどうかに依存する。つまり、その原子が規則的に整列されている時である。不規則な配列は、アモルファス。この位相変化は、レーザが材料を加熱すると、光によって始動する。「その材料は強く反応するので、またその特性を飛躍的に変えるので、シナプスの模倣、2つのニューロン間のインパルスの伝達に最適である」と論文の筆頭著者、Johannes Feldmannは説明している。同氏は、PhD論文の一環として実験の多くを実施した。
研究では、チームは初めて、多くのナノ構造の相変化材料を一つのニューロン・シナプスネットワークに統合することに成功した。チームは、4個の人工ニューロンと60のシナプスを持つチップを開発した。多層のチップ構造は、いわゆる波長分割多重技術をベースにしている、これは光ナノ回路内で光が異なるチャネルで伝達されるプロセスである。
そのシステムがパターンを認識できる範囲をテストするために、チームはそれに光パルスの形式で情報を「入力」した。これには2つの異なるマシンラーニングアルゴリズムを使用した。このプロセスで、人工システムは、例から学び、究極的にそれらを一般化できる。使用した2つのアルゴリズムの場合、教師ありと教師なしの学習の両方である。人工ネットワークは究極的に、所与の光パターンに基づいて、求めるパターンを認識することができた。その一つは、4つの連続文字だった。
「われわれのシステムは、脳のニューロンとシナプスと同じように振る舞い、実世界の作業を行うことができるコンピュータハードウエアの実現に向けた重要な一歩を可能にした。電子の代わりにフォトンで動作させることで、われわれは光技術の既知の能力を最大限利用できる。これまでのように、データ転送のためだけでなく、1箇所でデータを処理、蓄積するためにもである」とオクスフォード大学のHarish Bhaskaran教授は話している。
非常に特殊な例では、そのようなハードウエアの助けを借りて、ガン細胞が自動的に同定できる。そのようなアプリケーションが実現するまでには、さらなる研究が必要である。研究チームは、人工ニューロンとシナプスの数を増やし、ニューラルネットワークの深さを向上させなければならない。これは、例えば、シリコン技術を使って製造される光チップによって行うことができる。「このステップは、EUの共同プロジェクト’Fun-COMP’で、ナノチップ製造でファウンドリ加工を使い行われる」とFun-COMPプロジェクトリーダー、University of ExeterのC. David Wright教授は話している。