December, 7, 2018, Melbourne--Monash University (メルボルン、オーストラリア)、 University of Oviedo (アストリアス、スペイン)、 CIC nanoGUNE (サンセバスチャン、スペイン)、およびSoochow University (蘇州、中国)の国際研究チームは、自然の異方性2D材料、薄スラブ三酸化モリブデンで特殊方向にのみナノスケールスクイズド光が伝搬することを発見した。この固有の指向性に加えて、このナノライトは非常に長時間存続する。したがって、ナノスケールで、信号処理、センシング、熱マネージメントにアプリケーションが見つかる。
将来の情報通信技術は、エレクトロニクスだけでなく、ナノスケールで光の操作にも依存することになる。光をそのような小さなサイズにスクイーズ(閉じ込める)することは、何年も前からナノフォトニクスの主要な目標である。成功戦略はポラリトンの利用である。ポラリトンは、光と物質の結合から生まれる電磁波。特に強力な光スクイーズは、グラフェン、六方晶窒化ホウ素などの2D材料のIR周波数ポラリトンで達成可能である。しかし、類い希なポラリトン特性、例えばグラフェンポラリトンの電気チューニングなどは、最近これらの材料で達成されたが、ポラリトンは常に材料表面の全方向に伝播することが明らかになっており、このためエネルギー損失は急速であり、これが、そのアプリケーションの可能性を制約している。
最近、ポラリトンは、2D材料表面に沿って「異方性」伝播可能であることが予測され、ここでは電子特性や構造特性が方向性により異なる。この場合、ポラリトンの速度と波長は、伝播する方向に強く依存する。この特性は、ナノスケール閉じ込め光の形で、強い指向性ポラリトン伝播となる。これは、センシング、熱マネージメント、おそらく量子コンピューティング分野の将来アプリケーションが見つかる。
今回、国際研究チームは、長閉じ込め赤外ポラリトンを発見した。これは、自然の2D材料三酸化モリブデン(α-MoO3)の薄いスラブに沿って特殊方向にのみ伝播する。
「われわれの成果は、α-MoO3かIRナノフォトニクスの優れたプラットフォームになることを約束するものである」とQiaoliang Bao氏は話している。「これまでポラリトンの指向性伝播は人工的に構築された材料でのみ実験的に観察された、ここでは究極的ポラリトン閉じ込めは、自然材料で達成するよりも遙かに達成が難しい」とShaojuan Li氏は付け加えいる。
指向性伝播とは別に研究は、α-MoO3上のポラリトンが殊の外長寿命であることも明らかにした。「光は、α-MoO3ナノスケールハイウエイを進むようだ。ほぼ何の障害もなく一定の方向に進んでいく。われわれの計測は、α-MoO3上のポラリトンが20psまで生きることを示している。これは、室温で、高品質グラフェンにおける最良のポラリトン寿命よりも40倍大きい」とPablo Alonso-González氏は話している。
ポラリトンの波長が光の波長よりも著しく小さいので、研究者は特殊顕微鏡、近接場顕微鏡を使ってそれを撮る必要があった。
実験結果をよく理解するために研究チームは、α-MoO3におけるポラリトンの運動量とそのエネルギーとの関係を導き出す理論を開発した。「われわれは、α-MoO3におけるスクイーズド光が“hyperbolic”になることを理解した。これは、エネルギーと波面を表面に沿って異なる方向に伝播する、光学における興味深く珍しい効果に帰する(例えば、負の屈折率、スーパーレンズ)」とAlexey Nikitin氏は説明している。
現在の研究成果は、ナノスケールで、超低損失ポラリトンの助けを借りた、方向制御と光の操作に取り組む一連の研究の始まりに過ぎない。これは、光センシング、信号処理、あるいは熱マネージメント向けのより効率的なナノフォトニクスデバイスの開発にプラスになると考えられる。
(詳細は、https://www.nanogune.eu)