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シリコンチップに集積した光周波数コム光源でテラビット伝送

April, 16, 2014, Karlsruhe-- 微小光周波数コム光源で数Tbpsのデータストリームを数千km伝送できる。これを実験的に証明したのはカールスルーエ工科大学(KIT)とスイス連邦工科大学ローザンヌ校(École Polytechnique Fédérale de Lausanne)の研究グループ。その成果は、”Nature Photonics”に発表されている。
 この成果は、大規模コンピューティングセンタや世界の通信ネットワークのデータ伝送高速化に貢献する可能性がある。
 現在、大容量光伝送の主流となっている波長分割多重(WDM)伝送では、異なる波長のレーザ光に情報をエンコードし、それを100chs程度多重して伝送している。しかし、その拡張性には限界がある。KITの説明によると、これらのレーザの波長安定化は難しく、データチャネル間にガードバンドを設けてクロストークを防いでいる。
 KITとEPFLの研究グループは、今回発表の研究で、微小周波数コムを光源として採用した。データレート1.44Tbps、伝送距離は300kmだった。この研究で初めて、微小光周波数コム光源がテラビット領域のコヒレントデータ伝送に適していることを示した。
 光周波数コムは、John Hallと Theodor W. Hänschが開発し、2005年にその成果でノーベル物理学賞を受賞している。光周波数コムは、距離が同じで精密であることが分かっている多数の稠密スペクトラルラインで構成されている。これまで、周波数コムは主に高精度光原子時計、超高精度に光周波数を計測する光の物差しに使われてきた。従来の光周波数コム光源は大きくて高価な機器であり、データ伝送にはあまり適していない。さらに、通常の周波数コムのスペクトラルラインの間隔は狭すぎて、一般に20GHzを超える光通信のチャネル間隔に対応していない。
 KITとEPFLの共同実験で、ラインスペースを広げた集積光周波数コム光源がフォトニックチップ上で実現でき、大容量伝送に適用できることを実証した。この目的のために研究グループは、窒化シリコン(SiN)でできた光マイクロレゾネータを使い、導波路を介してそれにレーザ光を結合して長時間蓄積されるようにした。「この共振器の強い光強度により、いわゆるカー効果(Kerr effect)を利用して単一の連続レーザビームから多数のスペクトラルラインを生成、つまり周波数コムができる」とJörg Pfeifleは説明している。同氏は、KITで伝送実験を担当した。いわゆるカー周波数コムを生成するこの方法は、2007年にEPFLでTobias Kippenbergが明らかにしていた。カーコムは大きな光帯域幅で特徴付けられ、データ伝送要件に完全に適合するラインスペーシングを特徴とする。基本になるマイクロレゾネータは、EPFLマイクロテクノロジーセンタによる複雑なナノ製法の助けを借りて作製されている。
 このようなカー周波数コムを高速データ伝送に使用するのは、KITのフォトニクス&量子エレクトロニクス研究所(IPQ)とマイクロストラクチャ技術研究所(IMT)が初めてである。「カーコムの利用はデータセンタ内の通信に大変革を起こす可能性がある。データセンタで、超コンパクトな大容量伝送システムが緊要になっているからだ」とChristian Koosはコメントしている。「われわれはまだ緒についたばかりであり、実験では、周波数コムのわずか20ラインしか使っていない。これが増えることは確実であり、新しい実験も計画されている」と同氏は続けている。