Science/Research 詳細

魚類のウロコのキラキラ光を外部磁場を変えることで制御

November, 21, 2018, 広島--広島大学 ナノデバイス・バイオ融合科学研究所の岩坂正和教授、山口大学 大学院創成科学研究科 工学系学域の浅田裕法教授らの研究チームは、魚をキラキラさせる原因である非常に小さい鏡(グアニン結晶板)を磁場で操作し、これまで謎に包まれていた魚の体表の強い輝きの説明に成功した。
 このグアニン結晶板が単に光を反射するだけでなく、ある程度透明性も有することに着目し、水に囲まれた空間で鏡が周期的に配列することがキラキラを起こす本当の原因であることを明らかにした。

 天然のバイオクリスタライゼーションでできたグアニン結晶(魚類由来)の光反射特性について、硫酸バリウムおよび合成グアニン粉末の光反射と比較して測定し50%程度の光反射率を持ち、この魚由来グアニン結晶板近傍では強い光強度のコントラストを示すことを明らかにした。

次に、300µm厚の水槽内部にあるグアニン結晶板集団の配列を磁場で変化させ、反射光の強度が結晶板同士の向き合い方の変化に依存することを示した。その原理としてグアニン分子の反磁性の磁化率異方性を用いた。

水の中に多くのグアニン結晶板を浮遊させ対流させた状態でも、磁場の方向を水平方向から鉛直方向へと切り替えながら、水中で浮遊状態の結晶板の向きを90°刻みで変化させることが可能になった。この技術を用いてグアニン結晶集団でのレーザ光の射強度を2倍程度変化させることができた。

水中のグアニン結晶板の濃度を制御し結晶板間の平均的な距離が光反射強度に与える影響について調べた。磁場をオンにした際の光強度の速い変化と磁場をオフにした際の遅い緩和を比較することで、水中に浮遊した状態のグアニン結晶板が、1枚での光反射だけでなく、結晶板同士が向き合った際に生じる光干渉効果で反射する光の強度を増強させていることが明らかになった。この増幅した干渉光は、ガンなどの疾病予防のため細胞を調べる際の「マイクロ・サーチライト」として利用できる。

今回の手法のメリットとして、まず2つ挙げることができる。
1. 細胞の近傍あるいは細胞の内部で、このグアニン結晶板を生体親和性のある光学素子として利用できる。
2. 磁場を用いることで非接触な光デバイスが作製可能になる。ここで用いた磁場の強さは一般的に入手しやすい永久磁石で発生させることができる。また、グアニン結晶に強磁性を付与し今回用いた磁場の100分の1の強さの磁場でこのグアニン結晶の微小板による光反射スイッチングにも成功した。

これらの技術を組み合わせることで、例えば、暗視野照明法を用いる限外顕微鏡などによる細胞内外の成分の高感度・高機能計測手法の開発が今後期待される。また、単一細胞内外の粒子状の物体からの疾病情報計測を迅速化し、病気を予防することにも貢献できると期待できる。
(詳細は、www.jst.go.jp)