October, 30, 2018, 沖縄--沖縄科学技術大学院大学(OIST)の光・物質相互作用ユニットと量子システム研究ユニットの物理学者のチームが、原子間のカイラル力を計算する方法を発見した。
原子間のカイラル力とは、光ナノファイバと呼ばれる、直径数十から数百ナノメートル程の中空のパイプの近傍に存在する一つの原子が示す力。研究者らは、今回の発見を原子物理学と量子光学の分野に応用するだけでなく、量子技術の開発にも役立てたいと考えている。量子レベルの粒子への力を細かく制御することは、例えば、微小な測定量を非常に高い精度で測定できる量子センサの構築に非常に重要。研究成果はPhysicalReview A誌に掲載された。
原子は正電荷を帯びた原子核とその周囲を異なる軌道で廻る負電荷を帯びた電子群で構成されている。電子の軌道のサイズは、その原子が持つエネルギーの異なる状態を意味する。原子核から電子が離れれば離れるほど、その原子が持つエネルギーは高くなる。原子の電子群が光にさらされると、電子群はより大きな軌道に移行し、その原子を励起状態にする。この原子の励起状態は長くは続かず、余分なエネルギーはまもなく光の形で放出される。この状態が発生すると、原子は放出された光の粒子からの反動を受ける。
通常、原子はランダムな方向に光を放出するので、反動力は数多くの事象を合わせて平均化したものとなるが、電子が光ナノファイバの近くに置かれると、このような挙動は変化する。光ナノファイバは、標準的なシリカ・ナノファイバを加熱し、薄く伸ばして作製される特殊な材料。実際には、最終的な状態では、光が材料の内部を移動するにはあまりにも材料が薄いため、原子によって放出された光は材料の外側の表面に沿って移動する。材料表面に近接して配置された原子は、理論上は、この光と相互作用することができる。
OIST研究者らは、このカイラル力を計算、探求し、現在は量子工学のアプリケーションを開発するため、その成果を利用している。
研究者らの次のプロジェクトは、例えば、重力を測定する際に、既存のものよりも正確に測定できる新しい干渉計のアイディアを発案すること。この研究に基づいた干渉計を用いて、鉱物が多く埋蔵されている場所を見つけたり、地下にある配管場所を特定して道路建設を簡素化するなど、より実用的な目的で将来使用されることも期待している。
(詳細は、https://www.oist.jp)